ジョン・マクラフリン「ザ・プロミス」
John McLaughlin 「The Promise」
カオスな速弾きが持ち味のギター奏者ジョン・マクラフリンが1995年に放ったアルバム「ザ・プロミス」は、豪華ゲストが話題になった。
私は、パコ・デ・ルシア、アル・ディ・メオラという速弾きギター奏者2人との「スーパー・ギター・トリオ」再来に大いに期待して手に取った。
結論から言うと、ジェフ・ベックがギターで歌う収録曲「ジャンゴ」、デビッド・サンボーンがサックスで歌う収録曲「新人類」が特に良かった。
私が思うに、2人とも歌心があり、まさに歌うように、情感たっぷりの音色を響かせる奏者。どちらも大好きなミュージシャンだ。
欲を言えば、この2人の共演が聴きたかった。
「ジャンゴ」は、往年のギター奏者ラインハルト・ジャンゴに、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)のピアノ奏者ジョン・ルイスが捧げたジャズバラード。
アルバム「ザ・プロミス」収録の演奏は、マクラフリンとベックのギターで、しみじみと聴かせる。
キーボードと、♪ズダダダダダダダ…というドラムに続いて、2人が飛び込む。
最初はベックがリード。
♪チャーラーラーラララー…と物悲しい音色を奏でる。
1分30秒あたりからが聴きどころ。
♪タタラタタラ、チャーチャーチャーチャー…と始まり、2分すぎで感極まる。
3分すぎあたりからマクラフリンが前に出る。
♪チャララ、チャララ、チャー…とマクラフリンらしい、しゃくりあげるような演奏。
時折、速弾きを交える。4分20秒あたりが聴きどころ。
その後、ベックによるテーマの演奏になり、終盤に向けて助走する。
6分すぎから、ロック風味の合奏で締めくくる構成が面白い。
♪チャララチャララ…と速弾きを見せながら、フェードアウトする。余韻十分。
なお、マクラフリンは、ロック風味の演奏も、お手のものだ。
ジャズの帝王マイルス・デイビスのアルバム「ジャック・ジョンソン」(1971年)では、マイルスがロックの味付けを求めたのに、渋い演奏でしっかりと応えた。
ロック愛好家にも大おすすめしたい名盤。
サンボーンが参加した収録曲「新人類」は、川のせせらぎと野鳥の鳴き声で始まる。
50秒あたりで、♪プァーワー…と、おもむろにサンボーンが登場する。
パーカッションやドラムも加わり、何か始まる感を醸し出す。若干、妖しい雰囲気。
2分20秒あたりから、爽やかで、明るい曲調に変化し、♪プァラプァラプァッ…とサンボーンは軽快な演奏。
4分45秒あたりから、サンボーンが情感を高めてくる。
5分すぎあたりと、6分すぎあたりが聴きどころ。
野生的なパーカッションの演奏やサンボーンのブロウを挟み、7分40秒あたりで、ようやくマクラフリンが前に出てくる。
♪チャラチャラチャー、チャッチャッチャーラーチャ…と小刻みでリズミカルなソロ演奏。
9分すぎ、サンボーン復帰。
♪プァラプァラプァッ、プルルル、プルルル…といった小刻みな演奏。
そして、マクラフリンと絡みながら、フィニッシュ。
ベックとサンボーンは、スティービー・ワンダーのアルバム「トーキング・ブック」(1972年)にも、そろって参加して存在感を放った。
アルバム収録のヒット曲「迷信」の影に隠れがちだが、聴き逃せない。
ベックは、収録曲「アナザー・ピュア・ラブ」で短いソロを披露(1分50秒〜2分20秒あたり)。
「哀しみの恋人達」(ベックのアルバム「ブロウ・バイ・ブロウ」に収録)の時みたいに、♪タラタラタラタラ…と弾いている。
ソロデビュー前だったサンボーンは、収録曲「チューズデイ・ハートブレイク」に参加。
ソロはなく、スティービーのバックで吹いてるだけだけど、サンボーンらしい音色を聴かせる。
アルバム「ザ・プロミス」に話を戻す。
収録曲「ザ・ウイッシュ」は、インドの太鼓タブラの名手ザキール・フセインが参加した。
マクラフリンが率いるバンドのシャクティにも参加しており、旧知の間柄。
風鈴のような涼やかな音で始まる。
インド感満点の曲で、終盤の高速合奏が聴きどころ。
パコとディ・メオラを迎えた収録曲「エル・シエゴ」は残念ながら、期待外れ。
いや、3人とも超絶技巧の持ち主で、そつのない演奏なのだけども、なんか、変化やメリハリが乏しいせいか、淡泊に感じて、引き込まれるところがなかった。
あの3人ともあろう者がどうしたことだろうか。
3人の1980年のライブ盤「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ」が凄すぎたから、そう感じてしまったのかもしれない(パコとディ・メオラが共演する「地中海の舞踏/広い河」が最高)。

