パコ・デ・ルシア「炎」
Paco De Lucia 「Interpreta Manuel De Falla」
フラメンコギター奏者パコ・デ・ルシアの六重奏団の原点は、ここにある。
1978年のアルバム「炎」は、スペインのフュージョンバンド、ドローレスが参加。
ともにパコの兄であるラモン・デ・アルヘシラス(ギター奏者)、ぺぺ・デ・ルシア(歌手)も加わり、フュージョン風味とバンド形態の演奏を試した。
ドローレスと共演する収録曲「火祭りの踊り」「きつねの火踊り」は、のちの六重奏団のフラメンコ・フュージョンの趣。
ドローレスの一員のホルへ・パルド(フルート奏者)、ルベン・ダンタス(パーカッション奏者)の2人と、パコとの絡みが絶妙だ。
そもそも、このアルバムは、スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャのオペラ、バレエ音楽のカバー集。
「火祭りの踊り」「きつねの火踊り」は、ともにバレエ音楽「恋は魔術師」の楽曲から抜き出した。
こうした楽曲を大胆にアレンジして、フラメンコ・フュージョンとして聴かせるところに、パコのセンスを感じる。
「火祭りの踊り」は、ホルヘのフルート独奏で始まる。
ちょっと、妖しくて、何かが出てきそうな、イントロにふさわしい雰囲気を醸し出す。
まず、ラモン、そして、パコがギターをつま弾き始め、じわじわと盛り上げたところで、再びホルヘが加わり、躍動的な演奏になる。
1分30秒あたりからが前半の聴きどころ。
♪カカン、カンカンカン…とルベンがリズムを刻み、パコとホルヘが、♪ジャジャンジャンジャン…、♪プォー…、♪ジャジャンジャンジャン…、♪ピー…と掛け合う。
1分50秒あたりからはパコがエキゾチックな演奏を見せる。
3分20秒あたりから最後までが後半の聴きどころ。
ルベンの乱打を挟み、パコが疾走。速弾きも交える。
ホルヘの演奏を挟み、最後は、ギターの掛け合いでフィニッシュ。
「きつねの火踊り」は、落ち着いた曲で、パコは控えめ。
ルベンとホルヘの好演がよく味わえる。
2分あたりからが聴きどころ。
♪カッカンカン…と、ルベンが何だかコミカルな音を響かせるのを合図に、パコとホルヘが加わり、手拍子がフラメンコ感を高める。
弾むようなホルヘの演奏がいい。2分30秒あたり、3分あたりとか。
ホルヘとルベンは、パコの盟友のフラメンコ歌手カマロン・デ・ラ・イスラの1979年のアルバム「ラ・レジェンダ・デル・ティエンポ」にも参加した。
このアルバムのタイトル曲では、カマロンの歌のほか、ギター、ピアノの演奏が主体。ホルヘとルベンは手拍子役だ。
収録曲「ヴォランド・ヴォイ」では、ホルヘとルベンの躍動的な演奏が光るが、見せ場は多くない。
カマロンが求める音楽とは、あまり合わなかったのだろうか。
2人がカマロンではなく、パコと距離を縮めていった理由を想像すると、面白い。
アルバム「炎」の収録曲「スペイン舞曲」は、オペラ「はかなき人生」からのチョイス。
哀愁を帯びた美しい曲を、パコとラモンの息の合った二重奏で聴かせる。
収録曲「ムーア人の織物」は、ファリャの歌曲集「七つのスペイン民謡より」からのチョイス。ぺぺの歌が前面に出る。
パコは、1981年のアルバム「道」で、パコ、ラモン、ぺぺ、ホルヘ、ルベンの5人のほか、フラメンコ風の演奏を見せるエレキベース奏者カルロス・ベナベンテを加えて、パコ・デ・ルシア・セクステット(六重奏団)を結成。
同じ年のライブ・アンダー・ザ・スカイで、ジャズのピアノ奏者チック・コリアと共演し、チックがパコに捧げた曲「イエロー・ニンバス」で、パコにとっても、チックにとっても、屈指の熱演が生まれるのだ。
