ジェフ・ベック「フー・エルス!」
Jeff Beck 「Who Else !」
テクノ風のエレクトロビートを加えて、ジェフ・ベックのギターが歌う。
1999年のアルバム「フー・エルス!」は、好みが分かれるかもしれない。
私は、こんな音楽もやるんだ、と新鮮な思いで受け止めた。
躍動ベックの「ホワット・ママ・セッド」、しみじみベックの「デクラン」の2曲が秀逸だ。
この2曲だけで、アルバムを買う価値がある。
「ホワット・ママ・セッド」は、序盤の1分がとてもかっこいい。
0分13秒~38秒あたりが聴きどころ。
♪チャーチャッチャ、チャッチャラッチャ…という速いフレーズが繰り返され、いきなり引き込まれる。
これは、速弾きのタッピング奏法を得意とするギター奏者ジェニファー・バトゥン。
いきなり、意表を突く。
さらに「Did y'all hear what mama said?」(みんな、ママが言ったこと、聞いた?)という短い言葉が続くトリッキーな仕掛け。
そして、♪ジャッジャッ、ジャージャッ…と、ベックが登場する。
この満を持して感がいい。
何より、ベックのギターの音色。
1分すぎから、♪フォーン……フォーン……と、レーシングカーが次々と走り去るような効果音。そして、ポコポコな電子音。
再び、♪ジャッジャッ、ジャージャッ…の後、♪ズンズンチャッ、チャカポコ、チャカポコ…みたいなリズムを背景に、ベックが♪ギャウーン…とギターを鳴らす。
2分35秒あたりから、ベックが高まり、バトゥンが再び前に出て、交差。
♪ジャッジャッ、ジャージャッ…で締めくくる。
ところで、「Did y'all hear what mama said?」とは、何だろうか。
調べてみると、米国の古いコメディ映画「おかしなおかしなおかしな世界」に出てくるセリフだとか。
ネットで探したら、そのセリフの場面の動画も出てきた(29秒あたりで言う)。
この曲で、バトゥンを知ったけど、すごいね、この速弾き。
オペラの間奏曲で、速弾きの難曲とされる「熊蜂の飛行」(作曲・リムスキー・コルサコフ)をカバーして、名を上げたのだとか。
バトゥンの1992年のアルバム「アバヴ・ビロウ・アンド・ビヨンド」にある。
「熊蜂の飛行」と言えば、思い出す。
メタルバンド、マノウォーのジョーイ・ディマイオ(ベース奏者)が、これ見よがしに弾いていたことを。
1988年のアルバム「キングス・オブ・メタル」の収録曲「スティング・オブ・ザ・バンブルビー」がそれだ。
バトゥンの演奏と聴き比べると、面白い。
「デクラン」は、しみじみベックの極致。アイルランド民謡だという。
尺八みたいな笛の音色に、哀愁たっぷりなギターが絡み、癒やされる。
ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第2楽章(「遠き山に日は落ちて」で、おなじみ)に匹敵する、しみじみ感。
ベックのギターは、もはや、「あはれ」の領域に達したと言っていいだろう。
収録曲「サイコ・サム」は、エレクトロビートに乗り、疾走感のある曲。
2分23~36秒あたりの速弾きが聴きどころ。
収録曲「THX138」は、♪チャラララララララ、チャラララララララ…というギターにエレクトロビートが絡む。
3分13~38秒あたりの♪チャラララーラ、チャーラ、チャッチャラー…の音色が面白い。

