デレリアム「アンジェリクス」
Delerium 「Angelicus」
デレリアムの曲「アンジェリクス」は、アルメニア系のオペラ歌手イザベル・バイラクダリアンの美声が楽しめる。
歌詞はない。
ほぼ、「アーア、アアアアー」とか「アー」だけ。たまに「イェーエ、エエエー」を交える。それで、ずっと歌う。
それだけなのに、引き込まれるのは、やはり、美声の力。
曲のタイトルは、ラテン語で「天使」の意味。
アルメニアの聖歌を引用しているという。
ネットで検索してみると、それらしい曲が見つかった。
歌の元ネタは、たぶん、アルメニアの聖歌「Amen Hayr Surp」。
「アンジェリクス」で、イザベルの歌声を引き立てるエレクトロビートは、美しさの中にも力強さがある。これがいい。なんだか、元気が出る曲だ。
カナダの音楽ユニット、デレリアムは、宗教音楽や民族音楽にエレクトロビートを組み合わせつつ、ゲストの女性歌手を前面に出して、ポップさを併せ持つ。
ドイツのエニグマやフランスのディープ・フォレストと似ているけども、より親しみやすい感じだ。
初期のデレリアムは、デッド・カン・ダンスを思わせる妖しくてダークな音楽を作っていた。たとえば、1990年のアルバム「シロフェニカン」は、まさにデッド・カン・ダンスみたいだ。
収録曲「フォーガットン・プレイス」は「ムームームー」と鼻歌みたいな女性のスキャットがある。
ここだけ見たら、「アンジェリクス」と似ているけども、曲調はダーク。
「アンジェリクス」というより、デッド・カン・ダンスの「ペルシアン・ラブソング」が思い浮かぶ。
1994年のアルバム「セマンティック・スペース」から、女性歌手をゲストに迎えて歌を前面に出すようになる。
1997年のアルバム「カルマ」がひとつの到達点だ。
「アンジェリクス」を収めた2006年のアルバム「ヌアージュ・デュ・モンド」は、歌の美しさに力点を置いた感じ。
収録曲「ルメニス」でも、イザベルが美声を披露する。
中東風の音楽で、「アンジェリクス」とは趣が違って、面白い。
ちなみに、イザベルは映画「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」(2002年、3部作の第2作)の劇中の曲「Evenstar」を歌っている。
最後に、アルバム「ヌアージュ・デュ・モンド」の収録曲をもうひとつ。
「エクトッレレ」は、ピコピコ感の高いエレクトロビートと、もわーとした気だるげな歌声の取り合わせが、不思議な味わいを醸し出す。
ちょっと、コクトーツインズを思い出させる。
ゲスト歌手はキャサリン・ブレイクだとか。
