エンヤ「ブック・オブ・デイズ」
Enya 「Book Of Days」
聴いて、すぐ、それとわかる個性的な音楽。
アイルランドの歌姫エンヤは多重録音で歌声を重ね、ふわーっと広がる音楽を作る。
美しく、柔らかく、幻想的。
聴いていると、心が解きほぐされる。
一番好きな曲は「ブック・オブ・デイズ」(1991年のアルバム「シェパード・ムーン」に収録)。
♪タタタ、タン…といったピアノのイントロからして、わくわくさせられる。
「ブック・オブ・デイズ」という歌詞に続く0分43秒あたりからが聴きどころ。
何て言っているか、わからないが、もやーと重なりながら浮遊する歌声がいい。
「ファー・アンド・アウェイ」という歌詞に続く1分32秒あたりから、歌声を重ねているところも好き。
キラキラ音も入って、良い感じだ。
同じアルバムの収録曲「カリビアン・ブルー」もいい。
これは全体的に、ふわーっと、もやーっと、だ。
「オリノコ・フロウ」は、中毒性がある。
(1988年のアルバム「ウォーターマーク」の収録曲)。
0分34秒あたりからが特にいい。
「テャッ、テャッ……テャッ、テャッ……」というような歌声に、♪タラタラタラタラ…というシンセサイザーが絡む。
これが妙に味わい深い。
そして、これに続く「セラウェイ(sail away)、セラウェイ、セラウェイ」が、頭に染み込む。
多重録音で歌声を重ねた美しい曲は、ほかの歌手にもある。
たとえば、メタルバンド、ジ・アゴニストの「白鳥の湖」は、有名なバレエ音楽のカバー。
ボーカルのアリッサ・ホワイト=グラズの美声を重ね、伴奏を含めて再現している。
デスボイスとクリーンボイスを使い分けるアリッサが、ここではデスボイスを封印。
美声を再認識させられる面白い試みだ。
アリッサの持ち味は、やはり、デスボイスとクリーンボイスの組み合わせ。
デスボイスとクリーンボイスを頻繁に切り替える曲「サンキュー、ペイン」を紹介しておく。
癒やし度で言うと、エンヤに匹敵するのは、ロリーナ・マッケニットだろうか。
名曲「ママーズ・ダンス」を聴いてみてほしい。
アイスランドの歌姫ビョークの曲「ハイパーバラッド」は終盤、多重録音で歌声を重ねるのだけど、ライブでは重ねずに歌っている。
これがまた、アルバム収録のものとは違う味わいがあり、聴き比べると、面白い。
エンヤは極めて、まれにしか、ライブをやらない。
多重録音を駆使して作り込んだ音楽の再現がライブでは難しいからだ。
そもそも、エンヤは、内向的な性格で、ライブを好まないとも言われる。
歌声を重ねないライブバージョンの「ブック・オブ・デイズ」とか、「オリノコ・フロウ」とか、聴いてみたい。
ファンは喜ぶんじゃないかと思うけど・・・
徹底的に音楽を作り込むエンヤの美意識が許さないかもしれない。
おそらく、エンヤはそういう歌手だと想像する。
多くのミュージシャンを雇って厳選した演奏で曲を作るスティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーが思い浮かんだ。
