ジャコ・パストリアス、パット・メセニー、ブルース・ディトマス、ポール・ブレイ「ジャコ」
Jaco Pastorius, Pat Metheny, Bruce Ditmas, Paul Bley 「Jaco」
ベース奏者ジャコ・パストリアスとギター奏者パット・メセニーは同世代(ジャコが3歳上)の音楽仲間で、歩みが対照的だ。
ジャコは早熟の天才タイプ、パットは大器晩成の努力型だと、私は思う。
2人がソロデビュー前の1974年に共演したライブを聴くと、あらためて、感じる。
このライブは、ジャコとパットが、ともに先輩格のピアノ奏者ポール・ブレイ、ドラム奏者ブルース・ディトマスと共演。
4人連名のライブ盤「ジャコ」として1976年に発売された。
(ちなみに、私が持っているCDは、冒頭のAmazon商品とはジャケットが違う。以下の動画で表示されているジャケット)。
ブレイが若い2人の才能に着目して声をかけたのだと思う。
ジャコは、後年のライブ演奏でたびたび披露する得意フレーズが、早くも、このライブ盤で垣間見える。
既に自分のスタイルを確立していたのだと、わかる。
収録曲「ヴァンパイア」がおすすめ。
ジャコらしいグルーヴ感あふれる演奏が楽しめるスリリングな曲。
イントロからジャコお得意のフレーズ。
♪タラッタ、タータラタラッタ、タラッタ、タータラタラッタ…という。
このフレーズ、この頃から弾いていたんだなと感慨深い。
ピアノ奏者ハービー・ハンコックと共演した1977年のライブでも、ハービーの曲「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」の演奏に先立つメンバー紹介の時、このフレーズを弾いている。
いわば、ジャコの名刺みたいなフレーズ。
1986年のライブ盤「ライブ・イン・イタリア」の収録曲「ティーンタウン」の中盤や終盤、同じ年のライブ盤「シュツットガルト・アリア」(ギター奏者ビレリ・ラグレーンと連名)の収録曲「シュツットガルト・アリア2」の序盤や中盤、1984年のライブ盤「ブラックバード」(ドラム奏者ラシッド・アリと連名)の収録曲「ブロードウェイ・ブルース」(オーネット・コールマンの名曲のカバー)の終盤…と、あちこちで飛び出す。
悪く言えば、10年経っても同じ芸を見せているわけだけども・・・
たとえ「ワンパターン」と言われようとも、ジャコ大好きな私にとっては「これだよ、これ。ジャコだ~」という気持ちになり、感激する。
ライブ盤「ジャコ」の収録曲「バッテリー」も、ジャコらしさが味わえる。
冒頭からパットのギターを軸にカオスな感じの演奏で始まるのだけども、ジャコは、♪ブブブブブブブ…とか、♪ブッブブ、ブッブブ…とか、絶妙な合いの手を入れる。
2分あたりからのジャコのソロも聴きどころだ。
このライブ盤「ジャコ」は、ブレイが前衛的なフリージャズ畑の演奏家だけに、全体的にフリージャズ色が強い。
パットは、もともとフリージャズの巨人オーネット・コールマン(サックス奏者)に憧れていたこともあってか、このライブではフリージャズ寄りの演奏だ。
爽やかでドラマチックな後年の「パット節」は、かけらも見えない。
パットのフリージャズ寄りの演奏を味わうなら、収録曲「ヴァシュカー」がおすすめ。
0分35秒あたりから、ブレイのエレクトリックピアノとパットのギターが妖しげなメロディーを奏でる。
エレピの美しい音色と歪んだギターの音色が、妖しさを高める。
チック・コリア(ピアノ奏者)の名曲「リターン・トゥ・フォーエバー」みたいな趣。
4分30秒あたりから、パットのソロ。これも妖しげな音色だ。
収録曲「ドンキー」も、美しいエレピの音色で始まりながら、妖しい雰囲気の曲だ。
2分48秒あたりから、パットが前面に出る。
ギターの音色は、パットらしくも感じるけど、メロディーは違う。
聴いていると、やっぱりジャコの演奏のほうに耳が行ってしまうかな。
ジャコは、1976年に放ったソロデビューアルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」が傑作で、いきなり注目された。
同じ年、人気バンドのウェザーリポートに加入。キーボード奏者ジョー・ザビヌルとサックス奏者ウェイン・ショーターを柱とする、このバンドで、ジャコはショーターをかすませ、ザビヌルと張り合う存在になり、絶頂期を迎えた。
歌手ジョニ・ミッチェルとの共演でも名演を残し、1982年にウェザーリポートを脱退してからも注目され続けたけど・・・このへんから落ち目になっていった。
薬物に溺れて生活が荒れ、活動が行き詰まり、1987年にケンカ相手に殴られて35歳で逝去。太く短くという人生だった。
パットば、1976年にソロデビューアルバム「ブライト・サイズ・ライフ」を放ったけど、参加したジャコの演奏のほうが目立ち、パットは影が薄い印象。
憧れのオーネットと共同制作した1986年のアルバム「ソングX」では、オーネットの前衛的な演奏と絡みながらも、パットが爽やかな演奏を見せているのが面白い。
ブラジル音楽を取り入れ、ペドロ・アスナールのボーカルを加えた「レター・フロム・ホーム」(1989年)でパット節を確立。「シークレット・ストーリー」(1992年)はワールドミュージック風味を加えつつドラマ性を高めた傑作だ。
ユダヤ音楽をオーネット流に料理するプロジェクト「マサダ」(byジョン・ゾーン)にも参加。マサダに連なる作品でありながら、パットらしく爽やか、ドラマチックな音楽に仕上げたアルバム「タップ」(2013年)は、たゆまず精進したパットのひとつの到達点だ。
ジャコとパットは、ジョニのライブ盤「シャドウズ・アンド・ライト」(1980年)でも、顔を合わせている。全体的には絶頂期のジャコが目立っているのだけども、収録曲「フランスの恋人たち」でパットが見せるソロは美しくて爽やかだ。
パットは、「ジャコよ。俺も負けないぜ」という気持ちだったに、違いない。
パットが到達した高みをジャコに見せられなかったのも、せつない。
この2人の切磋琢磨をもっと見たかった。
