クインシー・ジョーンズ「グラ・マタリ」
Quincy Jones 「Gula Matari」
クインシー・ジョーンズが1970年に放ったアルバム「グラ・マタリ」を聴いたのは大学時代。
良い意味で予想を裏切られた。
クインシーと言えば、私は、子どもの頃に父のカセットテープで聴いた「愛のコリーダ」(1981年の同名アルバムに収録)のポップなイメージがあった。
クインシーがプロデュースし、マイケル・ジャクソン、シンディ・ローパーらスターが歌いつなぐ1985年のヒット曲「ウィー・アー・ザ・ワールド」の印象も強かった。
アルバム「グラ・マタリ」を手に取ったのは、まず、名前を聞いたことがあるジャズ演奏家が何人も参加していたから。
ミルト・ジャクソン(ヴィブラフォン)、ハービー・ハンコック(ピアノ)、フレディ・ハバード(トランペット)、トニー・ウィリアムス(ドラム)、ロン・カーター(ベース)とか。
個人的には、子どもの頃から父の影響で親しんでいたボブ・ジェームス(キーボード)の名前に安心感を覚えた。
そのBJのアルバムに参加して好演していたメジャー・ホリー(ベース、ボーカル)、ヒューバート・ロウズ(フルート)の名前もあった。
結果としては、私が一番親しみを感じていたBJは、どこにいるのか、わからなかった(ホリー、ロウズは期待通りの好演)。
何だか、もったいない使い方。
クインシーよ、おまえは、スティーリー・ダンか?という感じだけど・・・
知らない演奏家に出会えたのは収穫だった。
トゥーツ・シールマンス(ハーモニカ)は、このアルバム「グラ・マタリ」を聴いて知った。
ヴァレリー・シンプソンという歌手も知らなかった。
タイトル曲参加メンバーで、特に光っている。
アルバム収録曲も、サイモン&ガーファンクルのヒット曲「明日に架ける橋」のカバーとか、ジャズの帝王マイルス・デイビス(トランペット)のアルバムで知っていた「ウォーキン」とかがあり、買う時に、何となく安心感があった。
実際に聴いてみたら、「グラ・マタリ」「ハミン」のほうが好みに合った。
土臭くて、力強いジャズ。
クインシーは、こういうのも、やっていたんだ、と見る目が変わった。
このような出会い、気づきがあると、音楽鑑賞が楽しくなる。
アルバムのタイトル曲「グラ・マタリ」は、呪術的な妖しさを放つヴァレリー・シンプソンのボーカルが最高。
デッド・カン・ダンスのリサ・ジェラルドを思い出した。
ほかにも聴きどころ満載で、13分間、傾聴できる。
この曲は、「ウンダーーヤーーアォッ」という、呪文の詠唱のようなシンプソンの叫び声で始まる。
そして、フルートのヒューバート・ロウズが合いの手。
続いて・・・
「ヤッ、ナナナナナナァー」
フルート
「アアアアアーイー」
フルート
「ナナナナナナァーオー」
フルート
・・・と呪文詠唱とフルートが掛け合うイントロがとてもいい。
♪ポン、ポン、ポポン…とリズムを刻むのはマリンバだろうか。
「イヤイヤー、イヤー、イヤーイヤー」という呪文詠唱、フルート、ギターと続いた後、聴きどころが連発される。
5分45秒〜7分19秒あたりは、ミルト・ジャクソンのソロ。
ヴィブラフォンの音色が美しい。
7分57秒〜8分57秒あたりは、トゥーツ・シールマンスのハーモニカのソロ。
揺れるような演奏が情感を高める。
9分55秒〜10分11秒あたりは、メジャー・ホリーの野太いダミ声のスキャット。
これがかっこいい。
収録曲「ハミン」は、メジャー・ホリーのダミ声スキャットとトゥーツ・シールマンスの口笛で聴かせる。
ホリーのスキャットをよく味わうなら、この曲だろう。
1分48秒〜2分56秒あたりで、「ダンダンダンダ、ダーダダンダンダ…」などと、たっぷり聴かせる。
シールマンスの口笛とギターは、3分0秒〜4分54秒あたり。
これがまた、かっこいい。
7分20秒あたりから最後までのところも、ホリーのダミ声スキャットがある。
収録曲「ウォーキン」は、ミルト・ジャクソンのヴィブラフォンの音色が美しく、しゃれた仕上がりだ。
中盤、メジャー・ホリーのダミ声スキャットがいいアクセント。
ハービー・ハンコックは、エレクトリックピアノで流れるように奏でる。
収録曲「明日に架ける橋」は、エリック・ゲイルのギターが良い味わい。
歌は、ヴァレリー・シンプソン。
これに、トゥーツ・シールマンスのハーモニカが良い感じで絡む。
ピアノは、ハービー・ハンコック。
