マーカス・ミラー「ザ・キング・イズ・ゴーン」
Marcus Miller 「The Sun Don't Lie」
ベース奏者ジャコ・パストリアスを敬愛する演奏家は多く、同じベース奏者のマーカス・ミラーもその1人。
1993年のアルバム「ザ・キング・イズ・ゴーン」のライナーノーツ(音楽誌「ADLIB」編集長・松下佳男)にあるマーカスの言葉がわかりやすいから、一部抜粋してみる。
「ジャコのファーストアルバムを買ったのは、15か16の時だったと思う。言葉も出なかった。練習練習、また練習。ひたすらジャコを研究した。で、僕が自分自身のある到達点に至り、"ああ、やめた、もうジャコのようには弾かないぞ"と言うまでに、なんと2年もかかったんだ。それくらい僕にとって印象深い存在だったわけだ」
(以上、抜粋)
アルバム「ザ・キング・イズ・ゴーン」は、ジャズの帝王マイルス・デイビス(トランペット奏者)、そして、ジャコを追悼する趣向となっている。
私が大好きなジャコの代表曲「ティーンタウン」をカバーしているので、それ目当てで買った。
(「ティーンタウン」原曲は、ジャコが所属したバンド、ウェザーリポートの1977年のアルバム「ヘヴィ・ウェザー」に収録)。
「ティーンタウン」のカバーは、スラップ奏法によるマーカスらしい音色で、あのメロディーが聴けるのがいい。
南国ムードのスティールドラムが良いアクセント。
原曲では、ウェイン・ショーター(サックス奏者)が、0分24秒あたりで、♪プーアー…、0分41秒あたりでは、♪プァラッ、プァラッ…と絶妙な合いの手を入れる。
このカバーでは、スティールドラムで再現している(同様に0分24秒、0分41秒あたり)。
ギター奏者ハイラム・ブロックによるソロ演奏も聴きどころ(3分32秒あたりから)。
ソロ演奏で、3分46秒あたりからの、♪チャッチャチャ、チャーラッ、チャーラッ、チャッチャ…は、ウェザーリポートの曲「バードランド」でジャコが弾くフレーズ。
この遊び心がいい。
収録曲で一番好きな収録曲は「ジュジュ」。
ファンキーで、かっこいい。
カーク・ウェイラム(テナーサックス)、エヴァレット・ハープ(アルトサックス)のサックス奏者2人の掛け合いが聴きどころ。
ハープの情感たっぷりな演奏が特にいい。
これは、私が大好きなサックス奏者デビッド・サンボーン向きの曲だと思う。
マーカスの盟友であるサンボーンは、このアルバムに参加しているのだけども、この曲には出てこない。
ファンク路線こそ、サンボーンの真骨頂だから、この曲は、サンボーンに演奏してほしかった。
この曲で、マーカスは、3分41秒〜4分12秒あたりの躍動的なソロ演奏でファンク感を高める。
このマーカスの好演を聴くと、なおさら、サンボーンと一緒に演奏してほしかったと思う。
(サンボーンは、しっとり系の収録曲「スティーブランド」で、ショーターと共演。これはこれで面白いのだけど)。
アルバム邦題のタイトル曲「ザ・キング・イズ・ゴーン」では、マーカスがジャコ風の演奏を見せる。1分50秒〜3分3秒あたり。
この曲は粋なジャズの趣で、ショーターとドラム奏者トニー・ウィリアムスが前面に出ている。
ショーターは前面に出すと、そつのない演奏はするけど、あまり面白くない。
この人の持ち味は、サポート役としての絶妙な合いの手にあると思う。
または、幽霊のようにゆら~りと現れる妖しげな演奏。粋なムードは似合わない。
この曲は、マーカスとトニーの演奏を味わったほうがいい。
収録曲「スクープ」は、マーカスらしい演奏がよく味わえる。
2分27秒〜3分51秒あたりのソロが聴きどころ。
(以下の記事「リバー」で、合いの手ショーターと幽霊ショーターについて言及)
