パコ・デ・ルシア「ライブ・イン・トーキョー1981」
Paco De Lucia 「Live In Tokyo 1981」
フラメンコギター奏者パコ・デ・ルシアが追求した「新しいフラメンコ」の到達点が、六重奏団だ。
ほか5人のメンバーは・・・
兄でギター奏者のラモン・デ・アルヘシラス。
同じく兄で歌手のペペ・デ・ルシア。
ベース奏者カルロス・ベナベンテ。
フルート&サックス奏者ホルへ・パルド。
パーカッション奏者ルベン・ダンタス。
その音楽は、フラメンコ・フュージョン、フラメンコ・ジャズとでも言ったらいいだろうか。
1981年のライブ・アンダー・ザ・スカイ(東京・田園コロシアム)では、さらに、ジャズピアノ奏者チック・コリアがゲスト参加した。
チックがパコに捧げた曲「イエロー・ニンバス」での共演は、私が子どもの頃から父に聴かされて親しみ、今でも一番好きな音楽だ。
パコにとっても、チックにとっても屈指の名演。
それなのに長年、このライブ演奏はCD化されず、父がラジオ放送から録音したカセットテープで聴いてきた。
海外製CD「ライブ・イン・トーキョー1981」が発売されたのは2021年。
40年も経ってからだった。
このことは、以前の記事「イエロー・ニンバス」で書いた通り。
(今回の記事執筆にあたり、以前の記事のタイトルを「ライブ・イン・トーキョー1981」から「イエロー・ニンバス」に変えた)。
以前の記事では、収録11曲(3曲にチックが参加)のうち、ほぼ「イエロー・ニンバス」の紹介しかしていないから、あと3曲ほど、取り上げておきたい。
「イエロー・ニンバス」はパコとチックの2人の演奏が中心。ペペの歌や手拍子(パルマ)も入って、引き立てる。
六重奏団の魅力が存分に発揮されたライブ演奏の「火祭りの踊り」「二筋の川」「チャネラ」も大好きだ。
いずれもパコの六重奏団のライブ盤「ワン・サマー・ナイト」(1984年)にはない曲。「チャネラ」には、チックが加わっている。
「火祭りの踊り」は、スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャのバレエ音楽「恋は魔術師」の楽曲のひとつ。
パコが1978年のアルバム「炎」でカバーした。
六重奏団のライブ演奏では、パコのギターとホルへのフルートが前面に出ている。
揺らめく炎のようなホルへのフルートで始まり、まずはギターの2人(パコ、ラモン)、そして、ベースとパーカッションが加わる序盤がわくわく感を高める。
2分32秒あたりから、ホルへが、♪ヒョロロー、ヒョロロー…と妖しいフルートの音色を響かせる。
2分55秒あたりからはパコと合奏。
3分53秒あたりから、ベースとパーカッションも入り、本格始動。
4分23秒あたりから、パーカッションが前面に出る。だんだん、ゆっくりになり、そして、静かに。
このあたりは、映画「セッション」のヤマ場での主人公のドラム演奏を思い出させる。
「セッション」だと、そこから、また、だんだんとドラムが上昇してくるところだけど、この「火祭りの踊り」ライブ演奏では・・・
5分36秒あたりで、♪チャララララララ…と静寂を破って、パコが速弾きで飛び込んでくる。ここからが聴きどころだ。
これを合図に、また、六重奏団が駆け出す。
5分58秒あたりから、ホルへのフルートとパコのギターが絡み、ラストスパートに向けて助走。
6分7秒あたりから、♪タラタ、タラタ、タラタ、タラタ(パコ)、♪ピョピョピョ、ピョロピョロ、ピョロピョロ、ピョロロー(ホルへ)と来て、合奏し、♪ジャララ、ジャララ、ジャララ、ジャララ、ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャジャジャジャン!でフィニッシュ。
(YouTube動画では以下のものしか見つけられなかった。冒頭の1分10秒くらいがカットされている。この動画で言ったら4分25秒あたりからが聴きどころ)
「二筋の川」は、1973年のアルバム「二筋の川」のタイトル曲。
パーカッションを取り入れ、「新しいフラメンコ」の第一歩となった。
同じ曲でも、六重奏団のライブ演奏のほうが圧倒的にかっこいい。
アルバム収録のスタジオ録音版よりアップテンポで、スリリングだ。
パコの速弾きが冴え、ホルへはフルートとサックスを使い分ける。
このサックスが良いアクセント。
六重奏団の演奏を下支えするカルロス、ルベンの見せ場もある。
いきなり冒頭に。
カルロスのベースとルベンのパーカッションで始まり、パコが入る。
そして、0分42秒あたりで、パコが♪ジャララララララ…と高速のラスゲアード奏法を見せる(弦をかき鳴らすラスゲアード奏法を素早く連続。右手の人差し指を素早く上げ下げして弾いているのだと思う)。
これを合図に六重奏団が本格始動。
パコの速弾きが随所に入る。
1分12〜17秒あたり、2分21〜28秒あたり、2分38〜45秒あたり、3分1〜5秒あたり、3分25〜31秒あたり。
いったん、スローダウンして、3分50秒あたりから5分40秒あたりまで、ホルへのサックス。いかにも1980年代のフュージョンという趣の演奏だ。
その後、パコの速弾きを合図にラストスパートに向かう。
ホルへのフルートが、パコの速弾きと絡みながらフィニッシュ。
「チャネラ」も、六重奏団の総合力を感じさせる。
(スタジオ録音版は1981年のアルバム「道」に収録)。
♪チャンチャンチャン、チャンチャンッ…とパコが軽快なギターで幕を開け、♪ブオォン…とカルロスのベースが絡み、ルベンのパーカッションも出る。
そして、♪ピーロー、ピッピ、ピロー…とホルへがフルートで歌い出す。
1分13〜19秒あたりでは、パコが速弾きで盛り上げる、という感じだ。
今回はここにチックが加わっているのがミソだ。
チックが圧倒されて、飛び出すタイミングをつかみかねている感じが面白い。
曲の流れを見て、ここだなと前に出てくるけど、フルートとかぶったり、ベースとかぶったり。
2分18秒あたりで、ようやく、チックが♪タンタンタン、タンタッタタン…と前に出てくる。
2分34〜46秒あたりが聴きどころ。
タタタタン!タタタタタッタタン!と来て、♪タンタラタッタラ…と展開し、♪トゥルルルルル…と流れるところがいい。
チックは引き続き、前に出ようとするけど、パコが入ってきて、引く。
パコは3分18〜21秒あたりで速弾き。チックは引き立て役に回る。
チックが出ようとするけど、パコがうまく押さえて、絡んでいく。
その後、チックが出ようとすると、今度はホルへのフルートが押さえる。
この火花を散らすような緊迫感がいい。
4分21〜35秒あたりは、チックさん、どうぞ。
パコとチックが絡み、パコが引いたところでチックが出ようとすると、今度はカルロスのベースが押さえる。
次はホルへのフルート。
5分21〜36秒あたりは、チックさん、どうぞ。
チックは♪タタタタン、タタタタン、タンタッタンタタン…と乗ってくる。
パコの演奏、カルロスの演奏、ホルへの演奏を経て、6分23〜38秒あたりのチックも聴きどころ。♪タラタ、タラタ、タンタラッタラン…と。
その後、6分57秒あたりで、いったん沈静化して、7分4〜9秒あたりで、パコが速弾き。
♪ジャジャジャン、ジャジャジャン…と、ロシア民謡「カリンカ」っぽいメロディーを奏でた後、♪ジャラララララ…と変化し、ホルへが♪ピロロロロ…と絡んで、♪タカタンタカタン…とチックも加わって盛り上げてから、また、沈静化。
7分35秒あたりで、♪カッカ、カンコン…というルベンのパーカッションを合図に、一同騒いで締めくくり。
これが、とてもいい。
このライブ盤「ライブ・イン・トーキョー1981」は、ドライブしながら、大音量で聴くと、実に爽快。
もし、映画「2012」のような天変地異が起きて、箱舟に避難することになり、1枚だけCDを持ち込めるとしたら・・・
私は迷わず、「ライブ・イン・トーキョー1981」を選ぶ。
