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ジャコ・パストリアス(1951〜1987年)は、彗星のようにジャズ界に現れ、躍動感あふれる演奏でエレキベースを花形楽器に押し上げた。
酒と薬物で生活が荒れ、35歳で早逝した悲劇的な生きざまも相まって、熱烈なファンが多い。
私が初めてジャコの演奏を聴いたのは、大学時代の1990年代初め。
ジャズバンド、ウェザーリポートのアルバム「ヘヴィ・ウェザー」を聴いて、そのメンバーだったジャコを知り、即刻、惚れ込んだ。
このアルバムにあるヒット曲「バードランド」も大好きだけど・・・
特に気に入ったのが、ジャコ作の曲「ティーンタウン」。
ベースを主体にして、こんなに魅力的な曲が作れるんだ、と感動したのを覚えている。
当時すでにジャコは世を去っていた。
伝記「ジャコ・パストリアスの肖像」(ビル・ミルコウスキー)が出ていたから、読んで、ますます惚れた。
このブログの記事で、親交のあったギター奏者パット・メセニーと対比させたりして書いてきた通り、ジャコは、太く短くの天才型で、一芸の人。
表舞台に現れた当初から、自分のスタイルを確立していて、最後まで変わらなかった。
悪く言えば、ワンパターンなのだけど、その魅力が絶大。
ジャコが生み出すフレーズは輝いている。
たとえるなら、志村けんがずーっと、「バカ殿」や「変なおじさん」をやっていたようなもの。
志村は、出るぞ出るぞ、ほら、やっぱり・・・と視聴者が安心して楽しめる芸を大切にし、「マンネリは宝だ」と考えていた(このブログでも取り上げた著書「変なおじさん」によると)。
ジャコも似た芸風。
いわば、「ジャズ界の志村けん」と言っていい。
そして、「ティーンタウン」や、同じく代表的な曲の「コンティニューム」(ソロデビューアルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」に収録)は、ジャコにとって、「バカ殿」「変なおじさん」だ。
本当によく演奏している。
したがって、ジャコを味わうなら、まずは「ティーンタウン」「コンティニューム」を聴き込むのが、おすすめだ。
「ティーンタウン」なら・・・
ウェザーリポートのアルバム「ヘヴィ・ウェザー」収録のオリジナル、ウェザーリポートのライブ盤「8:30」収録のもの、ジャコのソロ活動のライブ盤「ライブ・イン・イタリア」収録のものが、私は好きだ。
(「8:30」収録の「ブラックマーケット」も大おすすめ。同名アルバム収録のオリジナルよりアップテンポで迫力があり、ジャコの演奏が生き生きとしている)。
ギター奏者ビレリ・ラグレーンと連名のライブ盤「シュトゥットガルト・アリア」収録の「シュトゥットガルト・アリア2」も聴いておきたい。
即興演奏版の「ティーンタウン」とも言える変わり種で、面白い。
「コンティニューム」は、アルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」収録のオリジナルがいい。
ドラム奏者ラシッド・アリと共演したライブ盤「ブラックバード」収録のものも、なかなか。
ちなみに、アルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」の収録曲では、ピアノ奏者ハービー・ハンコックと共演した「クル/スピーク・ライク・ア・チャイルド」も聴き逃せない。ジャコとハービーの速弾きの応酬がスリリングだ。
ライブ盤「ブラックバード」の収録曲では、フリージャズの巨人オーネット・コールマン(サックス奏者)の名曲「ブロードウェイ・ブルース」のカバーが秀逸。歪ませたベースの音色がとてもかっこいい。
ジャコ節の使い回しぶりを考察するなら・・・
まずは、ジャコとパットがソロデビュー前に、先輩格のピアノ奏者ポール・ブレイ、ドラム奏者ブルース・ディトマスと共演したライブ盤「ジャコ」。
収録曲「ヴァンパイア」を聴いてみるといい。
冒頭から、♪タラッタ、タータラタラッタ…と、お得意のフレーズの繰り返し。
この頃から弾いていたんだ、と気づく。
ライブ演奏の「ティーンタウン」でよく奏でる、このお得意フレーズは、ハービーと共演したライブでも炸裂する。
ハービーの曲「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」で。
私は「ハービー・ハンコック・ウィズ・ジャコ・パストリアス」という怪しげなCDで聴いた。
(以下の記事「カメレオン」で、「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」にも言及あり)
一時期よく共演した歌手ジョニ・ミッチェルのアルバム「逃避行」収録の「旅はなぐさめ」では、「コンティニューム」を思わせる叙情的な演奏が聴ける。
ちなみに、ジョニとの絡みで言うと・・・
ジョニのライブ盤「シャドウズ・アンド・ライト」の収録曲「デモインのおしゃれ賭博師」でジャコが見せる、♪ブブブブブブ…と震えるようなベース演奏が、かっこいい。
最後に、もう2枚、紹介しておきたい。
ひとつは、晩年のジャコが、若手ドラム奏者ブライアン・メルビンと共演したアルバム「ナイト・フード」。
実質的には、メルビンのリーダー作だけど、初期には、知名度の高いジャコの名義で発売された。
私が持っているのが、それで、魚の電飾のジャケットのもの。
生活が荒れた晩年のジャコの演奏なので、ファンの評価は低いけど、私は好き。
けっこう躍動的な演奏が聴ける。
もうひとつは、ジャコが、ギター奏者ジョン・マクラフリン、ドラム奏者トニー・ウィリアムスとライブのために結成したユニット「トリオ・オブ・ドゥーム」での演奏。
忖度なしのマクラフリンがグイグイと前に出てきて、負けじとトニーも張り切り、ジャコは、すっかり、かすんでいる。
ジャコの持ち曲「コンティニューム」も悲惨なことになっている。
でも、ジャコのうろたえぶりが面白くて、お気に入りの演奏だ。

