カマロン・デ・ラ・イスラ「テ・ロ・ディセ・カマロン」
Camaron De La Isla 「Te Lo Dice Camaron」
ロマ民族(ジプシー)のフラメンコ歌手カマロン・デ・ラ・イスラは、気合が十分な時には、「アイヤイヤーイー」とか、「レレレレー」とか、「ティリティリティリティリー」とか変な叫び声を発する。
変な叫び声を発してこそ、ジプシー魂に火がつき、本領を発揮する。
一方で、カマロンは盟友パコ・デ・ルシアと同様に「新しいフラメンコ」を模索した。
変な叫び声は、コアなフラメンコ愛好者を除くと、一般ウケしにくいかも・・・と思案したのだろう。
ジャズやロックの要素を取り入れた実験的なアルバム「ラ・レジェンダ・デル・ティエンポ」(1979年)と同じように、アルバム「カジェ・レアル」(1983年)でも、変な叫び声を我慢。代わりにスキャットみたいな歌い方を試したりして、ポップな曲調に合わせ、フラメンコ・ポップ路線のコツをつかんだ。
1986年のアルバム「テ・ロ・ディセ・カマロン」は、変な叫び声を入れつつも、ポップ。
ジプシーキングスやマイアミ・サウンド・マシーンみたいな雰囲気の音楽に仕上げた。
いわば、カマロンのフラメンコ・ポップの到達点。
パコと一緒に伝統的なフラメンコを追求した初期のアルバム「アル・ベルテ・ラス・フローレス・ジョラン」(1969年)、パコのフラメンコ・ジャズ路線を取り入れつつ、変な叫び声を存分に発するアルバム「ヴィヴィレ」(1984年)、そして「ラ・レジェンダ・デル・ティエンポ」「カジェ・レアル」と並ぶ傑作だ。
アルバム「テ・ロ・ディセ・カマロン」のギター奏者は、トマティート。
「フィーチャリング・トマティート」と銘打つだけあって、トマティートの演奏で聴かせるところも、けっこう、ある
オープニング曲「ピストラ・イ・クチージョ」は、厳かに祈るようなカマロンの歌で始まり、わくわく感を高める。
トマティートのギターがそっと滑り込み、0分43秒あたりから、♪ジャガンジャジャン、ジャンジャンジャン…と、弦をかき鳴らすラスゲアード奏法で、ブレリア形式らしいリズムを奏で、手拍子(パルマ)が加わって、走り出す。
(フラメンコは独特のリズムを重視し、そのリズムには、さまざまな形式がある。ブレリア形式はそのひとつ)。
カマロンは、1分24秒あたりで「ウゥウゥウゥー、ウェーエェー」、3分6秒あたりでは「ゲェーエェーエェー、エァアーアァアー」と、変な叫び声を放つ。
トマティートのギターは、2分28秒~2分43秒あたり、♪タンタランタラン、タンタランタラン…と、しゃくるような演奏が聴きどころだ。
ブレリア形式の魅力がよく表れた良い曲。
同じくブレリア形式で、パコの曲「セパ・アンダルーサ」や「アルモライマ」と聴き比べてみてほしい。
タイトル曲「テ・ロ・ディセ・カマロン」は、キューバ音楽を取り入れたルンバ形式(ルンバ・フラメンカ)で、乗りの良い曲。
「テ~ロ、ディセッ、カ~マロン!(カマロンは、そう言った)」と、コーラスが随所で繰り返され、癖になる。
曲は、カマロンの叫ぶような歌で始まり、ギターとパーカッションが呼応。
カマロンの祈るような歌が続く。
1分18秒あたりで、♪ポッコ、ポッコ、ポン…というコミカルなパーカッションを合図に、速いテンポになり、「テ~ロ、ディセッ、カ~マロン!」と、コーラスを繰り返して走り出す。
♪パッパッパラパ…とトランペットが盛り上げ、♪タッタラララン…と、いかにもスパニッシュなギターが始まる。
マイアミ・サウンド・マシーンを思わせる趣だ。
カマロンの変な叫び声は、1分59秒あたり。
「イーーアーーイィイーーチェーーッ」と放つ。
曲は、スパニッシュ感たっぷりなギターで締めくくり。
収録曲「ヴェンテ・コンミゴ」は、タンゴ形式の曲で、疾走感がある。
♪タッタカタッタカタッタ…という小気味よいパーカッションで始まる。
そして、カマロンの歌とバイオリン。続いて、ギターと手拍子。
0分57秒~1分8秒あたり、トマティートとバイオリン奏者の掛け合いが聴きどころだ。
バイオリンは弦を指ではじくピチカート奏法を交えてアクセントを付け、かっこいい。
トマティートは♪ジャンジャガジャンジャ…と、ラスゲアード奏法を多用。
そのせいか、ジプシーキングスに似た味わいだ。
1分59秒~2分7秒あたり、トマティートの速弾き&ジャンジャガもいい。
2分37秒~2分49秒あたりでは、トマティートの速弾きにバイオリンが絡む。
後半は、カマロンの変な叫び声が随所で発露。
2分52秒あたりで「オーオォオーオー」、3分6秒あたりで「イーイィイーイー」、3分30秒あたりで「レレレーレイーアァー」、3分52秒あたりで「レイ、レイ、レイ、イアァー」といった調子だ。
8曲収録のアルバムを締めくくる曲「ロス・インモルタレス」は、伝統的なフラメンコに近い。ブレリア形式。
「ティリティリティリティリー」と、カマロン得意の変な叫び声で始まる。
そして、トマティートの流れるようなギター演奏と手拍子。
0分31秒あたりから♪ジャガンジャジャン、ジャンジャンジャン…と、ラスゲアード奏法で、ブレリア形式らしいリズムを取る。
この曲でも、このジャガンジャジャン、ジャンジャンジャンが多用される。
カマロンは、2分12秒あたりで「アイヤイヤ、イーヤー、イヤー」と変な叫び声を放つ。
3分40秒あたりから最後までは「ティリティリティリティリー」を連発して、フェードアウト。
