(詳しくはリンク先の各記事へ。随時、追加・更新)
ジャズピアノ奏者ハービー・ハンコック(1940年~)は、新しい物が好きで、すぐ図に乗る。
ジャズの帝王マイルス・デイビスが開拓した電化ジャズは、そんなハービーに、うってつけのフィールド。
電化路線で、ハービーは激しく光り輝いた。
たとえば、「ロックイット」(1983年のアルバム「フューチャー・ショック」に収録)。
レコードをキュッキュッと言わすDJのスクラッチを効果音に取り入れ、斬新だった。
もういいというくらいのしつこい、キュッキュッ音に、ハービーのすかしたシンセサイザー、キューバの太鼓バタドラムのコミカルな響きが加わる。
ハービーのドヤ顔が目に浮かぶようだ。
エフェクトをかけて機械のような声にするヴォコーダー・ボイスもいち早く取り入れた。
「アイ・ソート・イット・ワズ・ユー」(1978年のアルバム「サンライト」に収録)は、自ら声にエフェクトをかけて歌いまくる怪作。
あまり歌が上手いとは思えないけど、本人はご機嫌。
動画を見てもらえば、わかるように、しっかりとドヤ顔だ。
同じマイルス門下のピアノ奏者チック・コリアも対抗心を刺激されたのだろう。
「グランパ・ブルース」(1980年のアルバム「タップ・ステップ」に収録)で、自ら声にエフェクトをかけて歌うけども・・・照れがある。
ハービーと違い、弾けてきれていない。
図に乗りハービーの最たる例が「イマジン・プロジェクト」(2010年のアルバム)。
「地球の平和」をテーマに世界のアーティストが名曲「イマジン」を歌うという企画。
なんか、昔、似たような企画があったな・・・「ウィー・アー・ザ・ワールド」かい!
おまえは、クインシー・ジョーンズになったつもりかー!
(以下の記事「ロックイット」では「アイ・ソート・イット・ワズ・ユー」や「イマジン・プロジェクト」にも言及)
なぜ、ハービーは、図に乗るのか。
ひとつには、自らの技量に自信があるからだ。
もうひとつは、持って生まれた愛嬌。
目新しい素材を取り入れ、コミカルな演奏で聴く者を楽しませつつ、一転して、クールで美しい演奏を見せたりする。
そして、ドヤ顔。
クールなオレ様も良いだろ?と。
たとえば、電化ハービーの最高傑作「カメレオン」(1973年のアルバム「ヘッド・ハンターズ」に収録)。
♪ドゥドゥドゥ、ドゥッドゥッドゥッ…というシンセベースのリズムが繰り返され、癖になる。
コミカルに愛嬌を振りまくシンセサイザーも聴きどころ。
そして、後半は一転して、クールで美しいキーボード演奏を見せる。
まるで、ハービーの多彩さを見せつけるかのようだ。
たとえば、ベース奏者ジャコ・パストリアスと共演した「クル/スピーク・ライク・ア・チャイルド」(ジャコの1976年のアルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」に収録)。
ジャコとハービーの速弾きの応酬が圧巻だ。
たとえば、1977年のライブでの「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」。
サックス奏者ベニー・モウピンの熱い演奏と、ハービーのクールで美しい演奏がよい対比になっている。
このライブは、ジャコもゲスト参加していて「ハービー・ハンコック ウィズ ジャコ・パストリアス」という適当なタイトルのCDが出ているけども・・・
ジャコは影が薄い。
「カメレオン」の♪ドゥドゥドゥ、ドゥッドゥッドゥッ…をジャコがベースで弾くのが面白いというくらいか。
ゲストとして控えめに好演する謙虚ハービーも、いくつか挙げておこう。
クインシーのアルバム「グラ・マタリ」(1970年)に参加すると・・・
「明日に架ける橋」では美しく、しっとりしたピアノを聴かせ、「ウォーキン」ではヴィブラフォン奏者ミルト・ジャクソンの引き立て役をきっちりと務める。
歌手ジョニ・ミッチェルがベース奏者チャールズ・ミンガスに捧げたアルバム「ミンガス」(1979年)に参加すると・・・
ミンガス作の名バラード「グッバイ・ポーク・パイ・ハット」で、気心知れたサックス奏者ウェイン・ショーターの絶妙な合いの手ブロウを、短く控えめな演奏で引き立てる。
これが、この曲のせつない雰囲気を高めている。
(以下の記事「シャドウズ・アンド・ライト」「ミンガス」で、「グッバイ・ポーク・パイ・ハット」にも言及)
そのジョニの曲のカバー集「リバー」(2007年のアルバム)は、全体的に、ショーターの演奏がさえているのだけども、ハービーもなかなか。
たとえば「コート・アンド・スパーク」のカバー。さきほど紹介した「明日に架ける橋」を思わせるような美しく、しっとりとしたピアノを聴かせる。
「謙虚ハービー」があればこそ、「図に乗りハービー」の奔放な弾けぶりがあるのかもしれない。
<私的ベスト3枚>
(1)ハービー・ハンコック「ヘッド・ハンターズ」
(2)ハービー・ハンコック「フューチャー・ショック」
(3)ジャコ・パストリアス「ジャコ・パストリアスの肖像」
<おまけリンク>
(以下の記事で、ディープ・フォレストの音楽の原点はハービー・ハンコックにあるのではないかと考察している)
(「ロックイット」でバタドラムをたたいたパーカッション奏者がダニエル・ポンセ)
(以下の記事で、TOTOがハービーの名曲「処女航海」をカバーしたことに言及)
<ハービー・ハンコックに興味がある方におすすめのアーティスト>
