てっちレビュー

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パット・メセニーの味わい方(名曲名盤ガイド5本パック) 爽やかでドラマチックなパット節はボーカルが入ると際立つ オーネットに憧れ、ジャコと切磋琢磨

 

(詳しくはリンク先の各記事へ。随時、追加・更新)

 

ジャズギター奏者パット・メセニー(Pat Metheny)の音楽は爽やかで、ドラマチックだ。

ボーカルが入ると、より魅力が際立つ。

もともとは、爽やかさとはほど遠い前衛的なフリージャズの巨人オーネット・コールマン(Ornette Coleman)に憧れた。

念願の共演も果たした。

ブラジル音楽を取り入れて、爽やか路線というスタイルを確立した。

さらには東欧、アジア、中東と各地の音楽を貪欲に取り入れ、起伏に富んだドラマ性の高い音楽を作るようになっていった。

切磋琢磨した3歳上の盟友でベース奏者のジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)が当初から自己のスタイルを確立していて最期まで一芸を貫いた早熟の天才だとすれば・・・

パットは、たゆまず進化し続けて大きく花開いた大器晩成型だと思う。

 

爽やか路線で、ボーカルが入る名曲と言えば・・・

まずは「ハブ・ユー・ハード(Have You Heard)」だろう。

1989年のアルバム「レター・フロム・ホーム(Letter from Home)」に収録されたこの曲は、歌手ペドロ・アスナール(Pedro Aznar)が「ララロ、ロレロロ…」と、ギターのフレーズを声で表現するような歌唱法を見せ、パットの演奏を引き立てる。

ブラジル音楽を取り入れた1987年のアルバム「スティル・ライフ(Still Life)」、さらに、アスナールのボーカルを加えた「レター・フロム・ホーム」で、パット節を確立した。

 

ボーカル入りでは、「ヒート・オブ・ザ・デイ(The Heat of The Day)」も、お気に入り。

1997年のアルバム「イマジナリー・デイ(Imaginary Day)」に収録されたこの曲は、フラメンコ風のギターの緊迫感あふれる演奏から、「ラー、レラーララー」とボーカルの伸びやかな歌声で曲調が切り替わる。

この緩急の付け方がうまい。

 

歌手の矢野顕子とも共演した。

パットの持ち曲「イッツ・フォー・ユー(It's for You)」での共演が秀逸だ(矢野の1989年のアルバム「ウエルカムバック」に収録)。

終盤、矢野のスキャットとの絡みが聴きどころ。

 

(以下の記事「ハブ・ユー・ハード」で、「ヒート・オブ・ザ・デイ」「イッツ・フォー・ユー」にも言及)

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パットの最高傑作は、1992年のアルバム「シークレット・ストーリー(Secret Story)」だと思う。

ワールド・ミュージック風味を加えつつ、ドラマ性を高めた。

一番好きな収録曲は「ファインディング・アンド・ビリービング(Finding and Believing)」。

カンボジア音楽を取り入れ、クラシックの管弦楽団も加え、3部構成の組曲風。

波の音から、♪タンタータ、タンタータ…とピアノの演奏で、スパッと第3部に切り替わるところが、繰り返し聴きたくなるほどの良さ。

 

パットは子どもの頃、小遣いで初めて買ったレコードがオーネットの「ニューヨーク・イズ・ナウ」だったらしい。

1976年のソロデビューアルバム「ブライト・サイズ・ライフ(Bright Size Life)」では、オーネットの「ニューヨーク・イズ・ナウ」から「ラウンド・トリップ(Round Trip)」「ブロードウェイ・ブルース(Broadway Blues)」の2曲をメドレーで取り上げている。思い入れは強かっただろう。

1986年にはオーネットと共同制作のアルバム「ソングX(Song X)」を発表した。

収録曲「ポリス・ピープル(Police People)」で、フリージャズ風ながら、爽やかな演奏を見せているのが興味深い。

おそらく、この共演で、進む方向を見いだしたのではないか。

 

(以下の記事「ファインディング・アンド・ビリービング」で、「ラウンド・トリップ/ブロードウェイ・ブルース」「ポリス・ピープル」にも言及)

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パットは、音楽大学の講師を務めていた頃、ジャコと出会い、意気投合したらしい。

ソロデビューアルバム「ブライト・サイズ・ライフ」でジャコをゲストに招く前にも共演している。先輩格のピアノ奏者ポール・ブレイ(Paul Bley)、ドラム奏者ブルース・ディトマス(Bruce Ditmas)を含め4人で共演した1974年のライブがそう。

4人連名のライブ盤「ジャコ(Jaco)」として1976年に発売された。

このライブ盤は、パットとジャコの歩みを考えるうえで、興味深い。

ジャコが、後年のライブ演奏で見せる得意のフレーズをこの頃から既に弾いていて、既に自己のスタイルを確立していたことがわかる。

一方で、パットの演奏には、のちのパット節のかけらもうかがえない。

 

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歌手ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)のライブ盤「シャドウズ・アンド・ライト(Shadows and Light)」(1980年)でも、ジャコと相まみえた。

パットは収録曲「フランスの恋人たち(In France They Kiss on Main Street)」で好演しているけども、収録曲「デモインのおしゃれ賭博師(The Dry Cleaner from Des Moines)」でのジャコの印象的な演奏と比べれば、まだ、ジャコの存在感とは差があるかなと感じる。

 

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そのジャコは1987年に急逝。

パットの悲しみは、友人を失ったというだけにとどまらなかっただろう。

その後のパットの飛躍的な成長を考えると、「おれも、おまえに負けちゃいないぜ」というところを見せたかったに違いない。

 

自分のスタイルを確立したパットは、どんな音楽でも「パットの音楽」に変えられた。

たとえば、2013年のアルバム「タップ(Tap)」。

同じくオーネットを敬愛するサックス奏者ジョン・ゾーン(John Zorn)の「マサダ」プロジェクトに賛同した異色作だ。

マサダは、ユダヤ音楽をオーネット流に料理するという、怪しげなプロジェクト。

提唱者ゾーンでさえ、自らの持ち味を見失い、マサダは、ただの中東風味のジャズに成り下がっていた。

パットは、このマサダ楽曲を、しっかりと、パットらしいドラマチックな音楽にアレンジした。

「タップ」は異色作ながら、パットの名作のひとつに数え上げられる出来栄えとなっている。

まさに、これは、自己のスタイルを確立したパットの強さ。

この境地に至ったパットと、ジャコの共演を聴いてみたかったと、つくづく思う。

 

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<私的ベスト3枚>

(1)パット・メセニー「シークレット・ストーリー」

(2)パット・メセニー「レター・フロム・ホーム」

(3)パット・メセニー「イマジナリー・デイ」

 

<おまけリンク>

パットが敬愛するオーネット・コールマン

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