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ジャズピアノ奏者ホレス・シルバー(Horace Silver)は、作曲センスが抜群で、乗りが良く親しみやすい曲をつむぐ。
私が一番好きな曲は「ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ(Blowin' The Blues Away)」(1959年の同名アルバムに収録)。
ホーンが勢いよく鳴り響き、疾走感のある曲で、朝聴くと、眠気が吹き飛ぶ。
同じアルバムの収録曲「シスター・セイディ(Sister Sadie)」も、ピアノとホーンが掛け合いを繰り返すイントロに心が浮き立つ。
コール・アンド・レスポンスというのか。
盟友のドラム奏者アート・ブレイキー(Art Blakey)の演奏で知られる定番曲「モーニン(Moanin')」みたいな感じだ。
シルバーは、トランペット、サックスといったホーンのかっこよさを引き立てるのがうまい。
そして、ホーンと絡むと、シルバーの演奏も生き生きとしてくる。
名曲「ソング・フォー・マイ・ファーザー(Song for My Father)」(1965年の同名アルバムに収録)は、好例だ。
サックス奏者ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)のまさに歌うようなソロ演奏が聴きどころ。
シルバーの演奏がうまく引き立てている。
逆に、ピアノ、ベース、ドラムのトリオ演奏だと、物足りない。
たとえば、トリオ演奏の「オパス・デ・ファンク(Opus De Funk)」は、私はあまり好きではない。この曲を収録した1953年のアルバム「ホレス・シルバー・トリオ&アート・ブレイキー、サブー(Horace Silver Trio & Art Blakey-Sabu)」は、完全にブレイキーとサブー・マルティネス(Sabu Martinez)にお株を奪われている。
(以下の記事「パロ・コンゴ」で、「ホレス・シルバー・トリオ&アート・ブレイキー、サブー」にも言及)
では、ピアノ奏者としては、たいしたことがないのかというと、そうではない。
シルバーの演奏は、とにかく軽やか。
軽やかな演奏が持ち味だ。
最大瞬間風速で言えば、やはり、「ソング・フォー・マイ・ファーザー」。
1分55〜59秒あたり、♪タタタ、タラン、タラン、タラン、タラン、タラン、タラランタ…と、軽やかにじゃれるような演奏は、えも言われぬ味わい深さがある。
ここだけ、何度も繰り返して聴きたくなるほどだ。
「軽やかシルバー」をじっくりと堪能したいなら、「ニカズ・ドリーム(Nica's Dream)」が最適だ。
前半、ホーンに存分に歌わせ、後半は軽やかなピアノで聴かせる。
1960年のアルバム「ホレス・スコープ(Horace-Scope)」に収録してある。
おそらく、シルバーにとって、ホーンは「歌」なのだ。
この歌心が、シルバーの親しみやすさの肝だと思う。
ジャズ歌手ディー・ディー・ブリッジウォーター(Dee Dee Bridgewater)の1995年のアルバム「ラブ&ピース〜トリビュート・トゥ・ホレス・シルバー(Love & Peace - A Tribute to Horace Silver)」を聴いてみるといい。
このアルバムは、シルバーの曲を歌うカバー集。
シルバーの曲は、歌がよく合うことに気づくはずだ。
<私的ベスト3枚>
(1)ホレス・シルバー「ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ」
(2)ホレス・シルバー「ソング・フォー・マイ・ファーザー」
(3)ホレス・シルバー「ホレス・スコープ」
<セルジオ・メンデスの原点は、ホレス・シルバー>
1960年代のボサノバ・ブームの立役者の1人、ピアノ奏者セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)は、もともと、シルバーに憧れ、ジャズに傾倒した。
1962年に初めてシルバーに会って以降、交流を続け、生涯、敬い続けたという。
ブラジル音楽とジャズを融合したボサノバに軸足を移し、さらにポップさを増した「セルメン・サウンド」を確立して人気を集めたけども・・・
そのセルメン・サウンドの原点は、シルバーだったのかもしれない。
セルメン・サウンド確立前の1961年にシルバーの曲「ニカズ・ドリーム」をカバー。セルメン・サウンド確立後の1969年には定番曲「モーニン」をカバーした。
ともにジャズの名曲のアレンジでも、全く趣が違う。
ぜひ、聴き比べてみてほしい。
たとえば、セルメン・サウンドの特徴は女性歌手2人のコーラスなのだけども・・・
シルバーがホーンに歌わせるとしたら、それに代わるセルジオ流の工夫が女性歌手2人のコーラスだったのではないかと、想像する。
ボサノバから、セルメンサウンドへの進化の過程は、ボサノバの定番曲「ビリンバウ(Berimbau)」を聴き比べるといいだろう。
この曲は、1965年のアルバム「セルジオ・メンデス&ブラジル'65」にも、1966年の「セルジオ・メンデス&ブラジル'66」にも入っているけども、趣は、かなり違う。
<ホレス・シルバーに興味がある方におすすめのアーティスト>
