てっちレビュー

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記者の転職 官公庁の広報担当者という道もある 実際に誘われたことがあるが、転勤で立ち消えになった

 

おととしの年末、当時の赴任地の地元自治体の首長から声をかけてもらった。

「今度の首長選でわしが再選されたらだけど、広報担当で来るか? 給料は正規職員よりは安くなるけど」と。

 

私を買ってくださる、大変ありがたいお言葉。

首長直属の非正規職員? なんか、面白そうだと感じた。

広報誌制作やプレスリリース作成から新聞広告の企画、マスコミ対策まで、いろいろと経験が生かせそうだなとも想像した。

 

その頃は、私は今の会社を定年前に辞める気持ちはあまりなかったので、それ以上、詰めた話はしなかった。

「ありがとうございます。ご縁があれば、ぜひ」との答えにとどめた。

 

私は、その赴任地でまだ働きたいとの希望を会社に伝えてはいたが、その翌年春(昨年春)、現在の赴任地に転勤となった。

なので、この転職の話は立ち消えになった(この首長は昨年の首長選で再選された)。

 

縁というのか、タイミングというのか、人生とは不思議なものだと思う。

恋愛と一緒だ。

 

もし、私が転勤にならずに前任地にいたら「以前のお話をお受けしたいのですが、本当にお世話になっていいですか?」と首長にお願いし、話を詰めただろう。

 

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このことがあってから「官公庁の広報担当という道もいいな」と考えるようになった。

 

実際に、もう10年以上前のことだが、弊社を定年退職後、自治体の広報官に転じた先輩がおられた。

 

かつての弊社の後輩で、30歳くらいの若い時に自治体に転職した方もいる。

この後輩は弊社では記者をしていて、自治体には広報的な業務の担当として採用された。その後、普通の職員のように異動があり、いろんな業務をしていた。

先日、久しぶりに話す機会があり、聞いたところ、最近、記者職の経験を生かせる業務を任されるようになってきたという。

 

何かというと、首長のゴーストライター的な業務。首長が、いろんなところから寄稿文を頼まれた時に、その素案を作る業務だ。

これまで、しかるべき部署の管理職の方がその業務を担っていたそうだが、ある時、たまたま、後輩が任されて書いたら、首長に「これは誰が書いたのか」と言って、喜ばれ、その後、同様な業務を任されるようになったという。

この首長は、私ごときが言うのも僭越だが、とても優秀な政治家で、広報的なセンスも持っておられる方。

後輩によると、今までは管理職が作成した素案を大幅に書き直していたが、後輩が作成した素案は書き直しが少なくて済むから、喜ばれたのだそうだ。

 

後輩が作成した素案がどう良かったのかは、想像がつく。

私たち記者は仕事柄、物事のポイントを絞って要約するのが上手い。

根掘り葉掘り、細かく取材するけども、聞いたことを全部書くわけではなく、重要な内容、面白い内容を見極めて、コンパクトにまとめる。

全体像を俯瞰しつつ、どこかに焦点を当てて、そこはディティールを書き込む。

その結果、新聞記事は、全体像も把握でき、具体的なイメージもわき、メッセージが伝わりやすい文章になっていると自負する。

 

自治体職員の方は、条例や規則はもちろん、厳格さや緻密さが求められるビジネス文書全般を得意としておられると思う。

メールをやり取りしても、礼儀正しく、しっかりとした文章を書かれるな〜と感じる。

一方で、記者のような文章が書ける方は、おそらく、なかなかいない。

 

実際、自治体職員の方が書いた文章は、羅列が多く、メリハリやリズムがない。

私たち記者は、焦点を当てるところ以外は、思い切って捨てたりするが、自治体職員の方は、真面目で丁寧だから、あれもこれも説明しておかないといけないと考えて、羅列になってしまう。

結果として、情報量は多いけど、重要なポイントが埋もれて、何が伝えたいのか、わかりにくい文章になりがちだ。

この首長は、記者に近い感覚も持っておられるから、後輩の能力を認めたのだと想像する。後輩自身もそのように解釈していた。

 

また、先日は、国の出先機関の総務部門の方から、プレスリリースの書き方の相談を受けた。私一人にということでなく、その時に記者室にいた同業他社の方もだ。

この出先機関は定期的に、統計的な情報をプレスリリースしてこられるが、ただ、数字が羅列してあるだけ(前年同期と比べた増減くらいは書いてあるが)。

実際のところ、定点観測的な意味しかないことが大半なので、そのようなプレスリリースを見ても、だいたい放置する。

記者が、そのような統計情報をニュースとして取り上げるかどうか、判断する時に、まず、考えるのは、それが珍しいことかどうか、今の世の中の関心事を反映した状況が表れているのかどうかといったこと。

なので、そのような情報をプレスリリースに盛り込むといいと思いますよ、というような話をした。

 

記者の経験が官公庁の広報に役立てられる余地があると、あらためて感じた。

 

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