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<記者の仕事あれこれ>知らないふり作戦と知ったふり作戦 いかに相手から情報、本音を引き出すか 取材現場の話術

 

手が回らず普段ほぼ行けてない、ある町の役場に先日、出かけた。

来春に町長選を控えており、9月定例議会の質問戦で、町長の進退に関する質問があるか、知りたかったからだ。

 

議会事務局長は、無愛想で口が悪い方。

だけど、ものの見方はしっかりしていて、たぶん、根は悪い人じゃない。

私は昨年春に今の支局に来てから、まだ3回くらいしか話したことがないが、口の悪さにも、もう慣れた。

 

役場のホームページで見た質問通告項目には、それらしい項目がなく、4年前の時、町長は12月議会で出馬表明しているので、念のための確認だった。

なお、この時点で私が知っていた情勢は、町議のA氏が出馬を検討中ということだけ(以前、本人に聞いたら、笑ってごまかされた)。

現職の町長がどうするのかは知らない。

地元選出の県議B氏が、県議会議長にまで上り詰めたので、次は首長に転身するのではとの見方もあるが、今でも町政に影響力があるのに、今さら町長はないだろうというのが私の見方。

 

議会事務局長は、「進退の質問が出るのは12月議会だろう」とのこと。

「ですよね〜。前回も12月議会でしたから」と受けたら、議会事務局長のレクチャースイッチがオン。

「考えてみなさいよ。辞めるなんて言ったら、周りの人がサーっと引いていく。行政視察に行っても、卒業旅行ですか、と見られてしまう」と。

私は、町長は引退する流れなんだなと感じたので「死に体になりますからね。普通はギリギリまで言わない」と受けつつ、「じゃあ、噂のA氏が出ますか? 以前、本人に聞いたら、どこで聞いたの?と笑ってごまかされたけど」と情勢に話を展開。

議会事務局長「噂だけなら、3人も4人もいる」

私「じゃあ、3人も4人もということはないにしても、誰か出て、選挙戦にはなりますね」

議会事務局長「自民党内で話がまとまれば、後継ということになるかもしれない。後継指名するかもしれないし」

私「あ、なるほど。B氏は、どうです?」

議会事務局長「議長を辞めて? それはないでしょう。タイミングが合わない。先に県議選があって、その後、町長選なら、わからないでもないけど、町長選のほうが先にある。あんた、筋道を考えて、物を言いなさいよ」

 

ここまでの会話で、だいたい、様子は、わかった。

今度、B氏に、町長の後継を誰にと考えているのか、聞かないといけないなと思った。

 

以上、紹介したのは、取材のやり取りの事例のひとつ。

 

記者の仕事は、いかに相手にしゃべらせるか、いかに本音を引き出すかが肝となる。

以前のブログ記事で書いたように、相手にしゃべらせる基本テクニックは「味方だと思わせること」と「ギブ・アンド・テイク」だけども、それだけじゃない。

「知ったふり作戦」と「知らないふり作戦」の使い分けも大事だ。

 

口の軽い、教えたがりの情報通的な方(本当の情報通は、だいたい、口が固い)だったら、「知らないので、教えてください」でいい。

「あ、そうなんですか。よくご存じですね」とか、「助かります。今度、その情報をもとに取材してみますね」とか、敬意と感謝の念を込めて、適宜あいづちを打つ。

 

たいていの相手は、何も知らない記者には何も教えてくれない。

そもそも、会話が続かない。

私は、県警担当だった駆け出しの頃、このことを身に染みて感じた。

警察取材は駆け出しの記者が担当することが多いので、駆け出しの記者を鍛えてやろう、育ててやろうという気持ちを持ってくれている警察幹部は少なくない。

「もっと、勉強してから来い」と叱られたこともある。

逆に、足で稼いで情報収集するなど努力していたら、「あんた、頑張ってるね」と助けてくれたこともある。

情報収集して自分なりの見方を示し、答え合わせをするというやり方を警察担当の時に、だいぶん、やった。

その延長にあるのがギブ・アンド・テイクだ。

 

話を戻す。

「知ったふり作戦」は、文字通り、知らなくても適当に話を合わせること。

これで、相手がしゃべり続けてくれることがある。

適当に話を合わせているだけと気づかれたら、不信感を持たれるリスクもある。

このため、少々、話題がズレても、本当に知っていることを交えて、「知っている感」を醸し出す。

 

「知らないふり作戦」は、口が軽い、教えたがりの方に対して、文字通り、知らないふりをするというのが、ひとつ。

もうひとつは、たぶん、違うだろうなと思うことをあえて言って、相手に「そうじゃない」とレクチャーしてもらうやり方。

真面目で、口が堅い相手に使うことがある。

ただ単に口が堅い相手には、通用しないこともある。

「そんなことも、わからないのか」と馬鹿にされることもある。

こちらの目的は情報を得ることなので、私は、気にならない。

その見方は違うというのも、情報だ。

物事にいくつかの可能性がある場合、違いそうなものをひとつひとつ潰していくのも、大事な取材だ。

「知らないふり作戦」は、同じ相手にやりすぎると、馬鹿な記者だと思われて、相手にされなくなるリスクもある。

ここは、注意が必要だ。

 

大前提として、私は、話を盛ることはあっても、ウソはつかない。

世の中には、ウソをつく記者も少なくないので、ウソをつかないことが好印象になることもある。

取材現場では、こざかしい策略も使うのだけど、最終的には「誠実で、信頼できる記者」であることが一番、役に立つ。

 

<余談>

知らないふり作戦のように、相手が考えているであろうことと反対の受け止めをして、否定させるというやり方は、首長の定例会見とかでも使う。

 

たとえば、ある物事に対して、「困難で、なかなか、やるとは言えないけど、みんなのためになるし、かっこいい選択肢A」と「あまりみんなのためにならないし、かっこ悪いけど、楽な選択肢B」があるとする。

相手は、A、Bのどちらか言わない。でも、おそらくAに向かいたいと考えていると推測される場合。少しやり取りした後で、たとえば、以下のように言う。

「お話を聞いて、選択肢Aは、躊躇しておられるのかなと受け止めました。まあ、Aは難しいですから、当然の判断だと思います。現実を考えたら、Bもありだし、みんなの理解も得られるかもしれません。あらためて、確認ですが、Bですか?」とか。

「えーっと・・・よくわからないですけど、もしかして、Bに向かおうとされていますか?」とか。

ホントにそう受け止めているという感じで、無邪気な瞳を向けながら。

 

ちょっと、話がそれるけど、ムキにさせるというのも、ひとつの作戦だ。

答えにくい質問をして、はぐらかされた場合、もう一度、全く同じ質問をするとか。

「答えられないんだろ?」っていう感じで、ニヤニヤしながら。

 

ただ、世の中には、鋼鉄のようにびくともしない首長もいる。

特に記憶に残るのは以前、応援で取材に携わった、ある県の知事。

職員が用意したペーパーを読むことしかしない方(かなり頭はいいと思うけど、超慎重な性格)で、その囲み取材の時もそうだった。

そこで、にらみつけるようにして、こう言ってみた。

「えーっと、紙に書いてあることを読むんじゃなくて、ちゃんと、知事ご自身の言葉で、語ってもらえませんか?」と。

知事は、ちょっと、ムッとした顔で、もう一度ペーパーを読んだ。

 

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