「障害者週間」(毎年12月3~9日)にちなむ体験作文コンテストの県予選(?)の審査員を務めた。
新聞社の支局長をしていると、行政の各種審議会の委員やコンテストの審査員など「充て職」を頼まれることがあり、今回の審査員もそうだ。
今回のコンテストの審査員は、赴任地の県からの依頼。
毎年、報道各社の支局長が持ち回りみたいな形で務めるのだとか。
私自身は初めて経験した。
コンテストの募集テーマは「障害のある人とない人との心のふれあい体験」。
恥ずかしながら、福祉は、あまり関心がない分野だ。
それでも、応募作品を読み込むうちに、面白くなってきた。
私が一番印象に残ったのは、特別支援学校高等部の生徒の作文。
前向きに目標を持ち、自ら進路を選択して生きる姿に好感を抱いた。
この方は、生まれつき聴覚障害があり、特別支援学校の幼稚部で発声・発語などのスキルを身に付け、通常の小学校に進んだ。
地域の友だちと一緒に勉強したかったからだという。
小学校では周囲にいろいろと配慮してもらったが、苦労も多かったそうだ。
一方で、健聴者と一緒に学び、集団生活を送る上での課題が分かり、貴重な体験だったという。
中学、高校は、特別支援学校を選択。
障害者としてさまざまな対応能力を身に付け、落ち着いた環境の中で学力を高めたいと考えたという。
高等部卒業後は、農業大学校で学んで、農業に就きたいとの夢を描いている。
なぜ、農業なのかと言えば、祖父母らが従事していて、その姿を見て育ったほか、地元に農家が多く、地域の方々と良い関係を築く上で最適な職業だと考えるからだという。
子どもの頃から明確なビジョンを持って歩んでこられたことに、まず、感銘を受けた。
私は、障害者の方は、進路の選択肢が狭く、主体的に生きるのが難しいと、思い込んでいた。
障害者であるための苦労は多かったそうだが、そのあたりはサラッと流して「貴重な体験だった」と言える前向きな姿勢も素晴らしい。
そもそも、幼い頃に障害がわかった時、お母さんは自然に受け止めたそうで、これまで「母の楽天的な性格に助けられてきた」という。
私の想像だけど、お母さんは、本心では、きっと、わが子の将来を思い悩んだろう。
でも、そんな姿を見せなかった。
だから、この方が伸び伸びと育ったのではないかと思う。
お母さんにも、頭が下がる。
障害の有無にかかわらず、世の中の人は、この方のように前向きに生きられる強い人ばかりではない。
それでも、何かをきっかけに、前を向いて生きようと考え直すことはできる。
作業所利用者の方の作文では、そう考えさせられた。
この方は、精神障害や発達障害があるために差別されたり、偏見を受けたりしてきて、世の中や人を信じることを諦めていたという。
転機は、病気で入院治療を受けたこと。
精神障害や発達障害のため、入院には不安が大きかったそうだが、医師や看護師の気遣いで、だんだん、心がほぐされていく様子が、作文には、つづられている。
世の中には善意にあふれた優しい人もいると思い、自分の味方の人たちのためにも、力強く生きたいと願うようになったという。
病室から眺める自然の風景に涙が出てきて、「生きているって、すごい」と感極まったという下りが、とてもいい。
この方は、これから、ハンディと向き合いながら、強く生きていかれるだろう。
明るい気持ちになれて、読後感が爽やかだった。
