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<記者の仕事あれこれ>コラム執筆で行き詰まったネタは、思い切って捨てると、新たなネタが浮かぶ 「三国志」の姜維が説く「離」の大切さ

 

出来事を取材して書く通常のニュース記事と違い、コラムは、何を書くかが思い浮かばないと書けない。

 

10年くらい前から7年半、新聞の1面コラムの執筆者の1人になった。

弊社では、専任の論説委員のほか、編集部門の管理職が兼務の論説委員として、1面コラムを書く。

 

出先の支局長のように、記者として取材に出る立場だと、コラムのネタ探しはそこまで大変ではない。

取材したニュースに絡めて書けるからだ。

大変なのは、デスクの時だ。

ネタ探しのため、取材に出かけることは事実上、不可能。

記者の頃の取材のこぼれ話を活用したこともあったが、長くは続かない。

直接取材には携わっていない時事ネタや私生活の体験に引っかけて、持論を書くこともあった。

読んだ本の内容に引っかけて書くというのも、よくあるパターンだ。

 

私は、日頃、コラムのネタになりそうなことを思いついたら、忘れないように、すぐにメモしていた。iPhoneの「メモ」を使って。

話題を思いついても、それで終わりではない。

エッセイではなく、コラムなので、批評だとか、提案だとか「主張」がないといけない。どのように論を展開して、どう落とすかを考えるのに一番、頭を使う。

主張のアイデアも、思い浮かんだ時にメモしていた。

もちろん、コラムになるまで膨らませられず、メモ段階で終わるものも、たくさん、ある。

日中は、本来の業務で手いっぱいなので、1面コラムは夜中に書く。

何を書くかが思い浮かばなければ、進まないので、明け方まで頑張っても、1文字も書けないこともある。

これだと思って書き始めても、途中で行き詰まることもある。

 

そんな時に思い出すのが、漫画「三国志」(横山光輝)に登場する武将・姜維の「『離』が大事」という言葉だ。

行き詰まったら、こだわりを捨て、別の方法を考えるべきだ、という趣旨の言葉。

「三国志」では、諸葛孔明が、進軍ルート上の敵軍の城の攻略に、予想外の苦戦を強いられて焦っているのを見かね、姜維が「離」を進言する。

「この城にこだわって、足止めされていることこそ、敵の思うつぼではありませんか」と。

なるほどと孔明は納得して、この城の攻略をやめ、別の進軍ルートに切り替えるのだ。

 

「三国志」より。「離」が大事

私にとっても「離」は、なるほどと思う言葉。

実際、筆が進まなくなったネタを惜しまずに捨て、頭を白紙にすると、別のネタが思い浮かぶもので、何度も救われた。

 

NHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク」書籍版第3巻によると、意外なことに、脳は、何も考えていない時のほうが大量のエネルギーを使う。

物事がひらめくのは、そんな時。無意識のうちに、脳内に散らばる情報をつなぎあわせて新しい発想を生み出しているとみられ、ボーッとすることが、ひらめくために重要だという。

行き詰まった時ほど、落ち着くと、視野が広がるということだろう。

 

あと、コラムのような原稿の場合、私は、書き上げてから、すぐに出稿せずに、一晩は寝かせる。

いったん書き上げたことで、気持ちが落ち着いて、頭がリセットされるのだろう。

翌日、見ると、「こうしたほうがもっといいな」と新しい考えがわいて、推敲できる。

 

ところで、私は、1面コラムの執筆を担当していた頃、だいたい、組日(掲載日の前日)の数日前に原稿を出していたけども、一度、ピンチがあった。

なかなか書けずに組日の朝に原稿を出したところ、論説委員長にネタ自体にダメ出しされ、全面的な書き直しを命じられた。

本来の業務の合間を縫って、別のネタを考えて書き直したら、また、それもダメで、またも別のネタで全面的に書き直して、ようやく通った。

落ち着いて考える時間的な余裕はなかったから、切羽詰まった状態で書いたけども、なぜか、書けた。

脳は、追い込まれると、爆発的な力を発揮できるのだろうか。

脳の潜在力に感謝する。

 

<余談・鶏肋>

「三国志」の英雄の1人・曹操が、「離」の逸話の時の孔明と同じように、戦いで引くに引かれない状態になる逸話「鶏肋」がある。

孔明と違うのは、曹操は、この戦にこだわらずに撤退したほうがいいと気づいていたことだ。

食事に出た鶏肋(ニワトリのあばら骨)を見て、「今の余の心境じゃ。鶏肋は食べようとしても肉はない。しかし捨てるには惜しい味がある…今の戦、進んでも勝ち目はなく、引けば他人が笑うであろう。どうしたら、よいものかのう」と思案。

本当は撤退したいという気持ちを秘めた「鶏肋」という言葉を、家来の前でつぶやいてしまう。

 

「三国志」より。鶏肋

伝え聞いた知恵者の揚修が、曹操の気持ちを察して撤退の準備をし始める。

これを知った曹操は、自分の心をのぞかれたことを不快に思い、「鶏肋とは、そういう意味ではない。勝手なことをするな」と言って、揚修を処刑。

そう言った手前、戦闘を続けざるを得なくなり、損害が増えて結局、撤退する。

気持ちの切り替えが早い曹操らしくない、珍しい逸話だ。

 

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