
新聞記者の仕事には、まず、ノートやペン、カメラ、ノートパソコンが欠かせない。
弊社の場合、デジタルカメラが導入されて以降、カメラは社有の備品が貸し出される(銀塩カメラを使っていた頃は、記者が個人でカメラを買って使っていた)。
望遠レンズは、いちおう、会社の備品もあるが、数が少ないので、私は自分で買って使っている(80~200ミリのズームレンズが使い勝手が良い)。
ノートパソコンも社から貸し出される(リース品)。
ノートやペンは、会社がまとめ買いしているので、勝手に取って使う(私の場合、お気に入りのジェルボールペンがあるので、ペンは自分で買って使っている)。
これらとは別に、個人的に買って持っておくと便利な品々を「記者の七つ道具」と称して、いくつか、紹介してみたい。
便宜上、「七つ道具」と称するが、7点以上ある。
脚立
必携アイテムに近い。写真を撮る時にも、場所取りの時にも使う。
2段くらいの低いもので、いい。
群衆の後方から写真を取る場合に、少し高い位置から撮れるというだけではない。
私は駆け出しの頃、写真撮影のテクニックのひとつとして「目線の高さを変える」ということを先輩に教わった。
普通に目の高さで撮った写真より、読者の目を引くという。
たとえば、絵画展の取材で展示風景を撮る時。脚立がなくても撮れるが、脚立に乗って少し高い位置から撮ると、構図が良い感じになる。
これは、人によって感じ方に違いがあるかもしれない。
記者仲間の様子を見ていると、このようなケースで脚立を使う記者は少ない。
私は、脚立を多用するほうだと思う。
私が思うに、「大きなもの」「広い場所」を撮る時は、高い位置から撮ると、うまく撮れる。ものによっては、逆に、しゃがんだりして低い位置から撮ることもある。
写真撮影の工夫については、機会をあらためて書いてみたい。
場所取りが必要な取材はよくある。
脚立に乗って撮らなくてもいいケースでも、場所取りが必要な時は脚立を持って行く。
脚立には、油性ペンで、社名を目立つように書いておくといい。
私は、取材先に脚立を忘れて帰ることが時々あるけども、社名が書いてあるので、取材相手が連絡をくださって、慌てて取りに帰るという感じだ。
長靴
ぬかるんだ場所や雪が積もった場所を歩くのに、必要。
スコップ(シャベル)
豪雪地帯では必携アイテム。車が積雪でスタックした時に使う。
長さ1メートルくらいの短いものが邪魔になりにくい。
私は、土を掘る時にも使いやすいように、先がとがったタイプを車に積んでいる。
実際に、現場で土を掘ったこともある。
昔、バラバラ殺人事件の取材をした時に、被害者の遺体が一部しか見つかっていなかったため、別の離れた場所に埋められたのではないかと想像し、遺体発見現場とは別の山に見当を付けて、地面を掘って捜索したことがある。
掘った場所から、遺体は出てこなかった。
もし、出てきていたら、大変なことになっていたかもしれない。
三角スケール
遺跡からの出土品などで、数センチくらいの小さな品物を撮影する時に、大きさがわかりやすいように、そばに置いて写真を撮るのに使う。
三角スケールは、長さ10センチくらいの定規。断面が三角形に近い。測量の仕事をしていた時の必携アイテム。略して「サンスケ」と呼んでいた。
1/100、1/200、1/300、1/400、1/500、1/600の6種類の目盛りが付いている。測量等、土木の現場では地図に当てて距離を読み取るのに使う。
1/100の目盛りがセンチメートルの定規の代わりにできる。
雨野帳と鉛筆
雨野帳(あめやちょう)は特殊な紙で作られた手帳で、濡れていても鉛筆で書ける。
つまり、雨が降る中でも、メモが取れる。
鉛筆は、Bとか、2Bとか、濃くて軟らかい芯のものが良い。
芯が太いシャープペンシルでもいいかもしれない。
(ボールペンはダメ。インクが水でにじむので書けない)。
私は、測量の仕事をしていた時に知った。
測量士らは工期が迫っている時など、雨や雪が降っていても現場(だいたい、山の中)に出動するので、雨野帳は必携アイテムだ。
新聞記者も、事件事故など雨の中でもメモを取ることがある。
サッカーの取材とか(雨天でも試合をする)、長時間、雨に打たれながらカメラを構えてシュートシーンを狙いつつ、メモを取るので、雨野帳があると便利。
ちなみに、私がいた測量会社では「雨野帳」と呼んでいたが、Amazonで探してみると、「測量野帳」という商品名だった。
サインペン
顔写真撮影時の名札を書く時に使う。
選挙の立候補者とか、複数の顔写真を一度に扱うニュースの時には、後で間違えないように、相手に名札を持ってもらって顔写真を撮るのが一般的だ。
(撮った記者は本人と会っているので、間違えることはないが、新聞製作の過程で、整理部の面担等に渡った時に、別人の顔写真と取り違えないように名札を入れて撮る)。
事前に用意できる場合は、パソコンで名札を作って持って行くが、取材現場で名札が急に必要になるケースもある。
私は、その時にはノートにサインペンで書いて、名札を作る。
名札を持ってもらって顔写真を撮るのは、「犯罪者みたいで嫌だ」と相手に嫌がられることも、たまにある。
いちおう、お願いはするが、無理強いはできない。
サインペンは、掲載紙送付の際に封筒に宛名を書くのにも使っている。
私のお気に入りのサインペンは「ラッションペン」。書き心地が良い。
ペンライト
夜間の事件事故の取材など、暗闇でメモを取ることがある。
メモを取るために両手がふさがるので(片手でノートを持ち、もう一方の手でペンを動かす)、ペンライトは口にくわえて、手元を照らす。
長さ10センチくらいの小さいペンライトがいい。
タオル
自分を拭くためというより、カメラを拭くために携えている。
雨の中でもカメラを構えて写真を撮ることは珍しくない。
カメラに水が入って故障しないように濡れたら時々拭くし、カメラにタオルをかぶせたりする。雨天の時は、レンズが曇るので、レンズを拭くのにも使う。
雨に濡れたり、汗をかいたりした時に、自分を拭くのにもタオルは役に立つ。
黒ネクタイと数珠
事件事故の被害者の顔写真を入手するために、ご遺族のところにうかがう時に使う。
ご遺族には、だいたい、叱られるし、おそらく、黒ネクタイや数珠を見てはおられないと思うが、こちらの気持ちの問題。厳粛な気持ちになって、うかがう。
アーミーナイフ
ハサミが付いたものがあると便利。
私が使っているのは、スイスのヴィクトリノックス社製のクラシック。
長さ5センチくらいの小さなもので、ナイフ、ヤスリ、ハサミが付いている。
運転免許を取った時に、キーホルダー代わりにと思い、父が持っていたのを1000円で譲ってもらった。
(私の父は少し変わっていて、父と私や弟の間で、相手の持ち物をほしい時は物々交換か代金を払うかだった。私や弟が子どもの頃から、そうだった)。
もう長年使っているので、表面の塗装がかなり剥げている。

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