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<記者の仕事あれこれ>新聞ネタにされやすい情報発信の工夫 自治体職員向け研修で話した 珍しいかどうか、裏付けデータは必須 予算要求段階でも記事化は可能

(上記のAmazon商品は本文とは直接関係ありません)

 

十数年前、赴任地の自治体の職員向け研修会で「情報発信の仕方」について話してくれと弊社に依頼があり、僭越ながら私が話したようだ。

パソコンにレジュメが残っているのを見つけ、思い出した。

当時、遊軍記者だったから、おそらく、上司に「おまえ、ヒマだろう」と言われて、私がやることになったのだと思う。

 

なお「遊軍」とは、官公庁等の記者クラブに所属しておらず、割と自由に自分が興味あるテーマで取材する記者。

実際には主催事業や広告絡みのイベント等「手配物」の取材、大きな事件事故があった場合の応援要員、大型連載企画を任されることが多い。

 

「新聞ネタにされやすい工夫」と題し、自治体の施策や事業が新聞やテレビのニュースとして取り上げられるには、どのようなことに気を配ったらいいかを話した。

「珍しい取り組みかどうかを明確に」「事業目的の裏付けとなるデータは必須」「検討段階でも記事にできる」という3点が柱。

ついでに、記者の立場に理解を深めてもらおうと、「記者にとって、悪いことがニュースなのか」についても話した。

それぞれ、振り返ってみたい。

 

<珍しい取り組みかどうか>

首長の定例会見や自治体の新年度当初予算案のレクなどで、新規の施策・事業をアピールしてきた時に、記者がよく尋ねるのが、「珍しい取り組みかどうか」ということだ。

珍しければ、それだけでいいわけではないし、必須要素ではないが、面白い取り組みで、なおかつ珍しければ、ニュース価値が1翻アップする。

 

「国内初」みたいなのはもちろん、「県内初」でもローカルニュースなら、いける。

「少なくとも県内では初めて」くらいまででも言い切ってもらえると、ありがたい。

 

だいたい、ほかの自治体の取り組みを参考にしていることが多いので、「近隣ではないとして、よそではどこがやっていますか」と聞いたら「X県Y市やP県Q市がやっています」といった答えが返ってくることもある。

「全国的にはまだ珍しいほうなんですね」と念押しして「X県Y市やP県Q市の例があるが、全国的には珍しいという」と書いたりする。

(「…という」は、「この自治体によると…」であり、ある意味、責任逃れなので、あまり多用したくないが、その日のうちに確認が難しい時は使うこともある)。

 

逆に、面白そうな事業だなと思って、聞いてみたら、「いや、近隣でもあちこちの市町村が既にやっていて、うちは遅いほうです」ということもある。

こう言われた時点で、取材する気は、かなりなくなる。

 

実際には「わかりません」という答えが多い。

「たぶん…」みたいなアバウトな答えもある。

「たぶん…」はくせ者で、思い違いも実際にあるので、「珍しいかどうか」要素が必須になるニュースの場合は、総務省や都道府県に確認する羽目になることもある。

特に「初」と言い切るのは難しいので、その日のうちに確認ができず、確信が持てない時は「珍しい」と表現を弱めることになる。

 

珍しくない時はともかく、珍しい時はそれで1翻アップするので、ぜひ、事前に調べておいてもらえると、助かる。

 

余談だが・・・

「珍しいかどうか」でも「裏付けのデータ」でも、「記者なんだから、自分で調べろ」と思われるかもしれない。時間をかけてする取材の場合はそうだと思う。

だけど、こちらも当日初めて知る話だし、発表物は基本的に翌日付の紙面に載せないといけない(結果として翌日付の紙面に入らず、残し原稿にされる場合もあるが、原稿はその日のうちに出さないといけない)。

この取材だけならいいけど、ほかの取材もある。

こちらが絶対に聞きそうなことは、あらかじめ、調べておいてもらえると、助かる。

「新聞社の都合なんか、知るか」と言われれば、それまでだが・・・あいまいなことが多いと、弱い記事になるから、扱いもそれなりになる。

しっかりと書いて大きく扱われたほうが、自治体にとっても、ためになると思う。

どことは言わないけど、翌日付の紙面に載せないといけないレベルの話を公表しておきながら、まともに取材に応じない相手に「忙しいから、明日にしてくれ」と言われることもある。

そんな時は「発表したのなら、ちゃんと、取材に応じろ」と内心は思いながらも、「わかった。5分でいいから」と言って、食い下がり、10分くらい聞く。

 

<裏付けとなるデータは必須>

なぜ、この施策・事業をするのか、その背景となる現状を示すデータは必須。

この施策・事業によって、どれくらいの効果が見込まれるかのデータもほしい。

住民にも、その施策・事業の必要性がよくわかってもらえると思う。

 

データとは、たとえば、「クマの目撃件数が昨年と比べて2倍に増えているから、こういう対策を打ちます」みたいなこと。

この現状の部分がニュースの核になることもある。

たとえばで言うと、「クマの目撃件数が昨年と比べて2倍に増え、みんなが困っている。地元自治体はこういう対策に乗り出すことにした」みたいに。

 

そもそも、こういうデータは施策・事業の予算要求をする時に、財政当局に示さないといけないデータではないかと思うのだけども、予算案レクの時に記者が尋ねると、「データを持ち合わせていない」「すぐにはデータが整わない」と言われることがある。

データの裏付けもなしに、施策・事業の必要性を認めて予算を付けているとは思えないから、この数字を記者に教えていいかどうか、内部的な手続きがいるということなのだろうと、想像するけども・・・

 

記者は聞くから、あらかじめ出せるようにしておいてもらえると、助かる。

情報公開に熱心な自治体の場合は、施策・事業の予算要求の段階から、裏付けのデータを含めて施策・事業の内容を公表している。

だから、データがすぐに出せないというのは不手際に見えてしまう。

 

<検討段階でも記事にできる>

「裏付けデータ」のところで書いたように、施策・事業の背景となる現状のデータが、ニュースの核になることもある。

その場合は、たとえばで言うと、「クマの目撃件数が昨年の2倍に増え、みんなが困っている。地元自治体はこういう対策を検討している」というような記事に仕立てられる。

 

その施策・事業に予算が付く可能性が低い場合は、検討段階で言えないと思うし、こちらも書きにくいが、たぶん予算が付くと見込まれる時は、予算案に組み込まれるまで待たなくても、予算要求の段階で積極的に公表すればいいと思う。

 

それは、なぜか。

予算案が固まった段階で一斉にさまざまな施策・事業を明らかにされても、こちらとしては、その自治体のことばかり一度に何本も記事を書けないというか、載せられない。

予算案の目玉になりそうな施策・事業は、予算案発表よりも前に、首長の定例会見などで少しずつ小出しにすると、記者はその都度、取り上げる。

 

情報発信というか、マスコミを使うのがうまい自治体は、首長の定例会見での小出し作戦をよく使っている。

予算案が発表される時には、目玉となる施策・事業はもう書き尽くしているけども、記者は、まだ書いていない施策・事業の中から何か見繕って書こうとするから、結果として、多くの施策・事業が取り上げられる。

 

逆に、下手な自治体は、予算案発表の時にいっぺんに出してくる。

そして、首長の定例会見の時には、記事にするような話題が出てこない。

ちぐはぐというか、とても、もったいない気がする。

 

<悪いことがニュースなのか>

新聞記者は、誰かが良いことをしているとか、頑張っているとかいう話は、あまり積極的には書かない。悪いことをしているとか、問題が起きているという話は、割と書く。

良いことは、ほっといても、当事者が宣伝するからだ。

記者は、どちらかというと、相手が言いたがらないこと、隠していることを探り出して書こうとする。そこが、新聞の存在価値だと思う。

相手にとって、都合の良いことも書くけど、悪いことも書くということは、新聞に対する信頼、信用の基になっているとも思う。悪いことも書いてあるから、信用されて、良いことの記事が生きることにもつながっていると思う。

───というようなことを、自治体の職員の研修で話した。

「是々非々で付き合っていきましょう。よろしく」という趣旨で言ったのだと思う。

 

研修の時のレジュメを見ていて、弊社内の研修の時にも私は同じような話をしたなということも、思い出した(外部の講師を招いての研修で、質疑応答の時に、私は挙手して、このようなことを発言した。どういう話の流れだったかは忘れた)。

 

あらためて読み返してみると・・・

言い方がこなれていなくて、詭弁っぽく感じるところもあるけど、「良いニュースも悪いニュースも載っていることが信頼につながる」というのは、その通りだと今も思う。

 

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