(上記のAmazon商品は本文とは関係ありません)
選挙の開票作業の取材では、仕分けて束ねられた票を見て、当落を見通す。
勝ち負けが最初からわかっている選挙はともかく、激しく競り合っている選挙だと、かなり身を乗り出し気味になる。
自治体の職員らが開票作業をしている会場には仕切りがしてあり、記者や陣営関係者は入れない。
見物席から、10メートル以上先を遠目に見る。
あの山がA候補だろうか、B候補だろうか、などと考えながら。
<逸話その1・目の前に票の束が積まれた>
今年春に、ある町長選の取材の応援で開票所を担当。
見たこともない流儀に驚いた。
なんと、見物席のすぐ目の前(2メートルくらい先)にテーブルが置いてあり、仕分けて束ねた票が、候補ごとに分けて、積まれていくのだ。
しかも、親切なことに「A候補」「B候補」と表示した場所に積まれていく(今回の選挙は現職と新人の一騎打ちだった)。
私は、国政選挙から市町村議選まで数多くの選挙を見てきたつもり。
それでも、こんなに見物人に優しい開票作業は、初めて見た。
この町は、平成の大合併前の旧町同士の対立構図がいまだに残り、選挙のたびに激しく争う「政争の町」。
この開票作業は、せめて見物人には心安らかでいてほしいという政争の町ならではの配慮なのだろうか。
いや、公正にやっていますよアピールなのだろう。
こんな流儀だとは知らなかったから、私は早めに会場に到着して、仕切りが設けられる前に開票作業スペースをうろつき、偵察した。
仕分けた票の束を入れる容器が候補によって色分けしてあったので、よし、この色を覚えておけば、遠目にでも票が読めるなと思っていたのだが・・・
目の前に積まれていくとは。
「開票あるある」なんだけども、票は、まず、同数ずつ順次、積まれていく。
A候補500票、B候補500票。
A候補1000票、B候補1000票。
・・・という風に。
容器の色を確かめていたことは、役に立った。
山に積まれる前に、容器に投入される票の束を遠目に見ていて、おそらくA候補が勝ちだとわかった。
とりあえず、その時点で、担当デスクと、両候補の事務所にいる担当記者にスマホのメッセージアプリでその旨を連絡。
最終局面では、開票担当の町職員が、差の付いた票の束を持ってA候補の山に近づいてきたので、「A候補勝ち」と担当デスク、担当記者に伝えた。
<逸話その2・1枚1枚じっくりと点検する選挙長にじらされた>
ここで、開票作業のおおまかな流れを説明してみる。
開票所には、まず、テーブルを並べて大きな台が作られ、そこに投票所から運ばれてきた投票箱が次々と並べられる。
開票開始の合図とともに、投票箱を開けて中身の票が台に広げられ、担当職員たちが候補ごとに仕分けていく。
仕分けた票は計数機にかけて数えられ、束になる。
その束は、会場の奥の席に並んでいる立会人(住民から選ばれる)や選挙長(だいたい、その自治体の選挙管理委員長)のもとに順次運ばれ、点検を受ける。
立会人らは票の束をパラパラッとめくって見て、間違いや不正がないかを確かめる。
最後に担当職員が集計。
・・・という感じだ。
点検は、本当にパラパラッという感じで、まあ、セレモニー的な作業。
ところが、十数年前に取材した、ある町議選では、選挙長にじらされた。
立会人はパラパラッなのだけども、選挙長(真面目そうな高齢男性)が1枚1枚、じっくりと点検していて、そこで票の束がストップし、どんどん、たまっていった。
一刻も早く集計して発表してほしい私たち記者や各候補の陣営関係者は、見物席にいて、かなりイライラした。
選挙長は、いけないことをしているわけでない。
誠実かつ丁寧に役目を果たそうとしているわけだけだ。
それは、わかるんだけども・・・
役場の担当職員も困った顔。
私は、目で一生懸命に訴えた。
だけども、選挙長は脇目も振らず、手元の票のみを注視していた。
最終的には、役場の担当職員が選挙長のところに行って何やら話したようで、若干、スピードアップ。
紙面の締め切りに間に合う時間で開票が終わり、ホッとした。
今年秋に取材した、ある町長選では、開票開始前に、役場の担当職員が立会人たちに「こう言っては何ですが、1枚1枚、じっくりと点検しなくても、パラパラッでいいですよ」的な説明をしていた。
ありがたかった。
<逸話その3・中間票に偏りがあり、候補が肝を冷やした>
最後にもうひとつ。
開票作業の途中で順次、発表される中間票の出し方について。
町村レベルの選挙はともかく、市レベル以上の選挙だと、票の数が多いので、確定票の前に、中間票が30分ごととか定時で発表される(町村レベルの選挙は確定票のみ)。
中間票は、最初はある程度、同数ずつそろえて出てくる。
そして、途中から差が付いてくる。
そのようにバランスを取って中間票を発表しないといけないルールがあるわけではないけども、実態として、そうなっている。
10年くらい前のX県議選Y選挙区では、各候補の中間票に極端な偏りがあった。
私も見ていて、不審に思った。
この時のX県議選Y選挙区は、定数12に対し、21人が立候補し、まれに見る乱戦。
地元自治体の開票担当職員らが作業を急ぐ余り、偏りに配慮が及ばなかったという。
落選かと肝を冷やした、ある当選者A氏が後日、県議会一般質問で県選管に苦言を呈す一幕もあり、興味深かった。
開票当日午後11時半時点の中間票で、最終的に落選した数人を含む十数人の得票が1000~3000票台となる一方で、A氏ら最終的に当選した数人が0~3票にとどまるなど、明らかに偏っていた。
A氏は、翌日午前0時時点の中間票でも1000票で、2000~3000票台の落選者数人を下回っており、当選圏に入ったのは、午前0時14分の確定票時点だった。
質問を終えてから、話を聞きに行ったら、A氏は「わしゃ、落ちたと思って、凍り付いたわ」と振り返っていた。
ほかの選挙区の議員からも「たしかに、おかしい」と同情する声が出ていた。
一方、同じY選挙区で、午後11時半時点で得票が1票だったベテラン議員B氏は、落選の不安はなかったという。
「バランスに配慮は必要だが、あれだけ候補が多いと難しい」と余裕の表情。
この人、すごいな、と私は思った。
