(上記のAmazon商品は本文と直接関係ありません)
レポート記事のような長い記事を書く時に、私は下書きとは別に新しいファイルを作って仕上げる。つまり、下書きがそのままパソコンに残る。
なお、レポート記事は、具体的な事例を盛り込んで、ニュースの背景や課題を分析し、記者の意見も書く、深掘りの記事。だいたい、120行くらい(弊紙は1行12字なので、1440字くらい)。
レポート記事を書く時の流れから、順を追って、説明してみる。
<レポート記事を書く時の流れ>
工程1、これまでの取材を基に、テーマと切り口、視点を考える(この時点では仮定や想定が含まれる)
工程2、企画書作成。デスクに提出
工程3、深掘り取材
工程4、企画書で想定した組み立てに沿って、素材の断片を書き出す
工程5、素材の断片を取捨選択し、並べ替えながら、組み立てを練り上げる。目を引く導入を考える
工程6、行数を気にせず、いったん、書き上げる(練り上げた組み立てに沿って、素材に肉付けしていく)
工程7、規定の行数より長いので、削る。これが大変。よりわかりやすい表現に改める等の推敲を経て出稿。
工程8、デスクのチェックを経て完成(修正が発生する。場合によっては追加取材も発生する)
ちなみに、組み立ては、原稿を3ブロックに分けて考える。
基本的には、以下のような感じになる。
ブロック1、具体的な事例や場面を交えて現状の紹介
ブロック2、なぜ、そんなことになっているのか、背景や課題の分析
ブロック3、こうしたほうがいいのではないか、というような記者の主張の展開
このような3ブロックに分けたうえで、工程4では、それぞれのブロックごとに、素材の断片を置いていく。
この段階で、私は、関係者のコメントを軸にして考えることが多い。
関係者の心情が吐露された象徴的なコメントを選んで、そのコメントが生きるように、状況説明やデータを肉付けしていく。
工程4〜7は記者によって、やり方が違うと思う。私は、昔から、このやり方。
4〜6の段階の下書きは消さずに残す。
つまり、下書き(4~6)に上書きするのではなく、4をコピーして、新たなファイルを作って、5を書く。5をコピーして新たなファイルを作って、6を書く。6をコピーして、新たなファイルを作って、7を書く。
情報量としては、4が多く、だんだん、少なくなって、7に至る。
4〜6を残してあるので、後戻りすることも可能だけど、実際にそうなることは、めったにない。
じゃあ、何のために、4〜6を残しているのか。
私が自分の思考の過程(足跡)として、消したくないから、残しているだけ。
後輩の若手記者にレポート記事の書き方を助言する時に、見せたこともあるけど、人それぞれ自分に合った書き方があるだろうから、見せることは、まれ。
あくまで自分のために残している。
だけど、この下書きって、もしかして、他人にも面白いと思って見てもらえるものなのかも、と思い直した。
先日投稿したブログ記事「毎日書き続けるコツ」が、思っていたよりもウケが良かったからだ。
実際の新聞記事や、その下書きをここには載せられないけども・・・
私は、ブログの記事も、メモ書きから断片に肉付けして膨らませるという、似たような工程で書くので、ブログ記事のメモ書きや下書きをお見せして、ブログ記事が完成するまでの工程の一端を紹介し、この記事を締めくくりたい。
<事例1「ワーキングマン」>
映画館を出て、すぐに、iPhoneのメモアプリで、印象に残ったことをメモしておいた。一緒に見た妻の感想も聞いた。
───メモ書きは以下の通り───
「ワーキングマン」
「ランボー ラストブラッド」を思い出した
ジェニーが死なないか、心配だった
ステイサムでなかったら、うれんな
ステイサム、年取ったな
B級っぽい
たいしたピンチもなく、ハラハラ感が乏しい
序盤、建設現場にある品物を使って戦うシーンは面白かった
ヒルティ、バケツの釘、ツルハシ、セメント?
5万ドル、あと2万ドル払えると言われても、昔と違う、と断ったのに
ファミリーだ、必ず助ける、約束する
レヴォン(ステイサム)
ジェニー。空手、ピアノ
メリー
車から出るな、言われたのに出る。イライラ。でも、誘拐されない
男女の下っ端2人組
ジェニーを人質にするかと思ったら、せんし。変態野郎がやられた時に
女に至っては、ジェニーに絞め落とされとるし
───以上、メモ書き───
家に帰ってから、メモ書きを見て、ランボーを思い出したこと、ジェニーが死なないか心配だったことを、書き出しに置くことにして、iPhoneのメモアプリで書き進めてみた。
書いていたら、このまま書き上げられそうな気がしてきたので、中断。
パソコンに移し、一気に書き上げた。
後日、推敲してから投稿した。
───パソコンに移す前の下書きは以下の通り───
「ワーキングマン」
ジェイソン・ステイサムは、ついに「ランボー」になってしまったか。
犯罪組織にさらわれた娘が死なないか、そればっかりが気になった。
終盤、武道の心得がある娘が自力で犯罪組織の下っ端を締め落として倒した時は、あまりのあっけなさに力が抜けた。
封切られた映画「ワーキングマン」を見て、すぐさま頭に浮かんだのは、シルベスター・スタローン主演「ランボー」シリーズ第5作「ランボー ラスト・ブラッド」(2019年)。
年老いて、のんびりと暮らすランボー(スタローン)の友人の孫娘ガブリエラが犯罪組織にさらわれ、ランボーが助けに行くけど、おいぼれたせいか、敵に捕まったりして手間取り、ガブリエラは、さんざん暴行されたうえ死んでしまうという後味悪すぎな作品。
怒ったランボーが犯罪組織のやつらを皆殺しにするのだけども、時すでに遅しだから、そこに爽快感は、全くない。
おまえ、それでも、ランボーか?と悲しくなったものだ。
本作「ワーキングマン」の主人公レヴォン(ステイサム)は元特殊部隊員。
建設会社の現場監督として平和に暮らしていたら、建設会社の経営者夫婦の娘ジェニーが犯罪組織にさらわれてしまう。
よく見ると、この作品、スタローンが脚本で絡んでいる。
まさか、ジェニーも死なせるんじゃないだろうな?とイヤな予感がした。
レヴォンことステイサムは、たいしたピンチに陥ることもなく、さくさくと犯罪組織の面々を倒していく。
終盤、ジェニーは両手を縛られて吊るされ、犯罪組織の顧客の大金持ちの変態オヤジに弄ばれそうになる。そばには組織の下っ端の男女2人組も待機。
ちょうど、このタイミングでこの部屋に突入したステイサムが、即座に変態オヤジを撃ち殺す。
下っ端男女2人組はジェニーを人質に取るんだろうなと思ったら、取らない。
男はステイサムに叩きのめされ、最後はおそらく首を折られて死亡。
女に至っては、両足は動かせるジェニーにヘッドシザースをかけられ、絞め落とされる。いかに、下っ端とはいえ、素人にやられたら、ダメだろう。
そして、ステイサムが救出。
この後も、犯罪組織の面々が襲いかかってくるけど、ステイサムは、さくさくと倒して、ジェニーを連れて無事脱出。
あっけなかった。
中盤、敵地に乗り込んだステイサムが「ここ(車の中)に、いろ」と言ったにもかかわらず、幼い娘メリーが無防備に車から出たのには、イラッとさせられた。
バカ、おまえ、さらわれるぞ、と。
映画「2012」の主人公が危険なところに行こうとした時に、足手まといになる息子が「ぼくも行く!」と言って付いてきた時と同じくらい、イラッとした。
(本作「ワーキングマン」は妻と2人で見たけど、もし、長女もいたら、長女もメリーにイラッとしたことだろう)。
ところが、メリーは、さらわれるわけでもなく、無事。
ジェニーが人質に取られなかったことといい、とにかく、見る者が想像するピンチがことごとく起きないから、拍子抜けだった。
序盤、工事現場で、チンピラたちと乱闘になった時、現場にある工具等を使って戦うシーンは、良かった。
セメント?が入った袋を投げたり、ツルハシを振るったりとか。
あと、
───以上、下書き───
完成した記事は以下のリンク先。
<事例2「ゴージャス★アイリン」>
「ゴージャス★アイリン」で書こうと思い、読み返してみた。
感じたこと、これはというセリフや描写を、iPhoneのメモアプリでメモした。
───メモ書きは以下の通り───
「ゴージャス★アイリン」
第1話と第2話で、アイリンのキャラクターが違う印象
なりきる
「ガラスの仮面」
荒木漫画の傑作短編
わずか2話だけど、とても面白い
アイリンの悲しみが出る第2話が好き
ジョジョへ進化の過程
バオーのスミレを思わせるアイリン
しかも、ノッツォを思わせるリスとの組み合わせ
ジョジョのジョナサンを思わせるマイケル
シュトロハイムを思わせる薬物の売人
部屋の窓ガラスを破って敵が入ってくるシーンは、吸血鬼になったディオを思わせる
だまし絵のような構図
独特のファッションセンス
特殊能力を持った主人公の物語
主人公と同じくらい魅力的で強力なライバルがいない
その反省がジョジョのディオとか
ゴージャス★アイリンは、何でも信じやすく、自己暗示にかかりやすい少女が主人公
化粧によって、肉体や性格すら変えてしまい、老婆にでも異人種にでもなりきるのが面白い
名セリフ
私は自分の心を隠すために化粧をするの
家族や仲間が死んだ悲しみを隠すため
血に潜む殺し屋の性質を隠すため
そして、すべてを信じる
心の底から
アイリン
だますつもりはなかったの
心の底から装わなければ生きていけない
マイケル
信じるよ
彼女は嘘をつく
自分の体で
頭で考えだした
背景の嘘なんかよりは巧みに
ジャン・コクトー
───以上、メモ書き───
当初のメモ書きの時点では、メイクでなりきるアイリンと、演劇の役柄になりきって演技する「ガラスの仮面」のマヤを対比させる想定だった。
後日、メモ書きを見ていて、第2話のアイリンのほうが好きだという話で展開しようと考えた。
それと比べ、第1話のアイリンはあまり深みがないということを書こうと思い、その流れで「ガラスの仮面」に触れることにした。
その部分のパーツを作り、メモ書きに追加した。
───メモ書きに追加したパーツは以下の通り───
漫画「ガラスの仮面」(美内すずえ)の主人公マヤを、あまり好きになれないのと一緒で、ビーティーも、第1話アイリンも、何というか、人間味があまり感じられない。
ちなみに、マヤは、天性の才能だけで、あっさりと勝負に勝ってしまったりするタイプ。猛烈な努力家で、いくら頑張ってもマヤに勝てずに悩むライバルの亜弓が、私は好きだ。
───以上、追加したパーツ───
第2話のアイリンが好きだという話で展開することに決めたので、書き出しは、第2話のアイリンのキャラクターをよく表すセリフを持ってくることにした。
少し書き進めただけで、このまま書き上げられそうな気がしてきたので、中断。
パソコンに移して、一気に書き上げた。
後日、推敲してから、投稿した。
───パソコンに移す前の下書きは以下の通り───
「ゴージャス★アイリン」荒木飛呂彦
私は一方で、自分の心を隠すために化粧をするの
家族や仲間が死んだ悲しみを隠すため
血に潜む殺し屋の性質を隠すため
そして、すべてを信じる
心の底から
(「ゴージャス★アイリン」第2話より)
漫画家・荒木飛呂彦の短編「ゴージャス★アイリン」は、わずか2話しかないけども、とても記憶に残る傑作。
主人公アイリンのキャラクターの印象が第1話と第2話で違うのも不思議だ。
「変身」を扱う、この作品ならでは、なのだろうか。
私は、悲しみを内に秘めた第2話のアイリンが好き。
この記事の冒頭に引用したアイリンのセリフがいい。
───以上、下書き───
完成した記事は以下のリンク先。
私の場合、メモ書きの後、切り口や視点を思いつき、さらに書き出しが思い浮かんだら、一気に書けることが多い。
事例として挙げた「ワーキングマン」「ゴージャス★アイリン」は、そうだった。
切り口や視点がなかなか思い浮かばない時は、メモ書きに少しずつ肉付けしていく。
<余談・見出しは記事を書きながら考える>
新聞記事を書く場合、見出しを考えながら書く。
紙面に載る見出しを付けるのは、「整理部」という部署が担当するのだけども、記者が記事を書く段階で、見出しを意識する意義は十分にある。
見出しが付けられるということは、ニュースのポイントをきちんと押さえて、自分が何を書こうとしているかが、よくわかっているということだ。
逆に言うと、そこがわかっていないと、見出しは付けられない。
ブログ記事を書く時も、見出しは早い段階で考える。
何を書こうとしているか、自分の頭を整理することにもなる。
ただし、ブログ記事の場合は、「目を引くこと」を重視して、見出しを付けている。
記事の内容のうち、主要な部分でなくても、目を引きそうな要素を強調することもある。
記事の内容を素直に要約して見出しを付ける新聞とは、そこが違う。
ブログは、新聞と比べて、かなり長い見出しでも付けられるので、文章みたいな長い見出しでも付けている。
一方で、状況によっては、見出しが全部表示されないこともある。
なので、「短縮できる言葉は短縮」「目を引くキーワードがあまり後ろにならないように」ということも考えている。
ブログは新聞とは違うということは、意識して、やっている。
