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自治体の2026年度当初予算案の発表が相次ぐ時期になった。
今回は、自治体の当初予算について、思い出を書いてみたい。
企業の経営を報道する時は、いかに売り上げを伸ばし、経費を抑えて、利益を上げられたのか、成果を示す「決算」が重視される。
これに対し、自治体の経営を報道する時は、住民のより良い暮らしのために、どのような投資をするのか、戦略を示す「予算」が重視される。
自治体の予算の中でも特に注目されるのが、新年度の1年間の戦略を示す、いわゆる「当初予算」。
1年間の間に、その時その時の状況に応じて、新規の事業を加えたりするための「補正予算」が組まれるのだけども、大筋の戦略は当初予算に表れている。
当初予算は、住民のための投資の戦略だから、総額がいくらかということは、ニュースの重要な要素になる。
私が整理部所属を経て、記者になったばかりの1999年頃とか昔は、当初予算総額が前年度と比べて増えたのか、減ったのかが今以上に重視されていた。
増えていたら「積極編成」、減っていたら「消極編成」と言い表していたものだ。
これ、「積極」と書いたら「やる気満々」、「消極」と書いたら「やる気があんまりない」という印象を与えてしまうと思う。
当時はそう書くのが普通だったけど、たしかに、良い表現ではなかった。
実際、自治体の幹部から「減らしたくて減らしているわけじゃない」と、お叱りを受けたこともある。
今では、「積極編成」「消極編成」という表現は使わない。使わなくなって久しい。
どの自治体も財政が厳しくて、ギリギリの予算編成をしているという風に、受け止め方が変わってきた。
地方交付税が大幅に削減された2004年の「地財ショック」とか、08年の金融危機「リーマン・ショック」とかの頃からだったろうか。
それでも、当初予算総額が増えると、「頑張っている感」が醸し出されるようだ。
当初予算総額の増加にこだわる自治体の首長もいる。
税収とか歳入が増えていて、そうするのなら、別にいい。
ところが、見せかけだけ、総額を膨らませているのかと思わせるケースもあった。
たとえば、前年度の決算剰余金の繰り越し。
ある自治体の当初予算で、このようなケースがあり、素直に疑問に思った。
そんなことして、いいの?と。
自治体経営では、予算は余裕を持たせて組んでいるから、決算の段階では、だいたい、お金が余る。これが剰余金。
ただし、前年度の決算は新年度の秋頃にならないと固まらない。
新年度の当初予算編成をしている時期には、まだ、固まっていない。
なのに、この自治体は、まだ、どうなるか、はっきりしていない前年度の決算剰余金を、いくらと見込んで、新年度の当初予算の歳入に計上していた。
緻密な自治体職員の方々が見込んでいることだから、見込み通りになるのだろうけども、理屈として、おかしくないか。
よく見たら、この自治体はここ数年間、同じことを繰り返していた。
盛り盛りの当初予算を作ってお金を余らせ、そのお金で次の年も当初予算を膨らませるという。
首長にこのことを尋ねると「アクロバティックな手法」と言っていた。
アクロバティックって・・・要は綱渡りですよね?
綱渡りみたいなテクニックで当初予算総額を膨らませるのは、おかしい。数字にとらわれすぎだ。大事なのは首長の体面でなく、住民の暮らしが良くなったかどうかだろう。こんなことをしていると、「見せかけだけか」と疑念を招きかねない───というような解説記事を書いた。
首長には、たぶん、嫌がられたと思う。
私の中では、会心の解説記事。
翌年の当初予算は、首長選挙を控えていて、政策的な事業の「肉付け」を選挙後に持ち越す、いわゆる「骨格編成」で、総額が減っても当たり前。
だから、総額にはあまりこだわらずに組んでいて、決算剰余金の繰り越しはやっていなかった。
この自治体に限らずだけど・・・
骨格編成の当初予算は、首長のカラーがあまり出ないから、攻めにくい。
この首長が選挙で勝つことはわかっていたので、「新首長の当選後の肉付けの時に、財源に決算剰余金の繰り越しを使う余地を残した」的なことは書いたけど、ショボい嫌味でしかなく、つまらない解説記事になった。
自治体の幹部の方に「このたびは、優しい解説だったね。どうしたの?」と笑顔で言われたものだ。
新たな切り口を思いつかなかった私の負けだと思い、すごく悔しかった。
