(上記のAmazon商品は本文と直接関係ありません)
このたび完了した支局の移転に向けて、旧事務所の片付けを進めていた時に、「非読者アンケート」の集計結果の資料が私の机の引き出しから見つかり、懐かしくなった。
弊紙を購読していない方を対象に「なぜ、弊紙を購読していないのか」「(弊紙に限らず)新聞のどういうところが不満か」「新聞がどう変わったら、読もうと思うか」といった問いをぶつけたもの(選択式で、複数回答)。
私が編集局のデスクをしていた数年前に、局内の会議で提案して、やってもらった。
質問項目は、私が考えた。
<「デジタルで読みたい」「無料で読みたい」>
集計結果をざっくりと紹介してみる。
「なぜ、弊紙を購読していないのか」については・・・
「インターネットやSNSで情報を得られるから」が突出して多かった。
このほか「テレビで情報を得られる」「他の新聞を読んでいる」「職場で読んでいる」等が続いた。
「新聞のどういうところが不満か」については・・・
「お金を払って買わないといけない」が最も多かった。
このほか「ネットニュースのように関連ニュースに飛べない」「情報が探しにくい」「値段が高い」等が続いた。
「モノクロページがある」「写真や図が少ない」「縦書きで読みにくい」等の選択肢を選ぶ方は少なかった。
つまり、今の新聞の体裁を変えたくらいではダメだということだ。
「新聞が以下のように変わったら、読んでみてもいいと思うか」については・・・
「デジタル版を充実させる」が突出して多かった。
このほか「無料にする」「1カ月の購読料を1000円程度にする」「古新聞を回収する」等が続いた。
総じて言うと・・・
「デジタルで読みたい」「無料で読みたい」というニーズが多いと感じた。
<読者アンケートに替えて提案>
このような非読者アンケートは、弊社では、ほとんどしたことがないと思う。
もしかしたら、初めてかもしれない。
少なくとも私の記憶にはない。
弊紙を購読してくれている方への「読者アンケート」は時々、やっていた。
ただ、「いつから購読しているか」とか、「どのページをよく読むか」とか、「どんな情報が増えてほしいか」とか、私に言わせれば、あまり意味のないアンケート。
数年前の会議で、読者の窓口担当の先輩が「久しぶりに読者アンケートをやろうと思う」と質問項目案を示された。
そこで、私は、以前から思っていたことを発言した。
「新聞を読んでない人に、何がダメなのか、どうしたらいいのかを聞いたほうが、よっぽど意味がある」と。
私だったら、こんな質問を入れて、こんな選択肢を設けるということも話した。
会議では、「だったら、おまえがアンケート案を作ってみろ」ということになった。
その日のうちに作り、読者の窓口担当の先輩に提出し、次回の会議で諮ってもらった。
私は、思いつき力は高いと思うけど、場の空気が読めないし、根回しなど考えもしない性分(おそらく、ユングの「タイプ論」で言う「外向的直観型」)。
会議の場で、いきなり、先輩の顔を潰すような発言をしてしまったわけだけども・・・
この先輩は、温厚で度量が大きい人格者(だから、読者からのクレーム対応等、読者の窓口担当という難しい仕事が務まる。私なら、クレームを付けてきた読者とけんかになりそうだ)。
以前、私は部下として仕えたことがあり、割と気安かったからか、私の提案を優しく受け止めて「やってみよう」と言ってくださった。
ありがたいことだ。
<「無料」ニーズに応えるのは困難>
非読者アンケートの集計結果は編集局内の会議で示された。
上の方々がどのように受け止め、経営にどう生かされたのかは、わからない。
集計結果は、ある程度、予想していた通り。
それを確認するためのアンケートだったのだけど・・・
新聞社としては「新聞を無料にする」というのは、かなり難しい。
広告収入だけで新聞経営を成り立たせるのは、極めて困難。
それこそ、紙の新聞の製作をやめて、デジタル版のみに絞り、印刷、配送の経費を浮かせたとしても、ハードルが高いだろう。
ただ、紙の新聞で頑張っていても、行き詰まるんだな~というのは強く感じた。
ちなみに、みんなが「インターネットで情報を得る」というのは、「Yahoo!ニュース、スマートニュース、LINEニュース等のニュースサイトで読む」というのも含まれると思うけど・・・
ニュースサイトに載っている記事は、新聞、テレビといった報道各社が売っている。
そして、ニュースサイトへの記事配信料(基本的にページビューに応じて新聞社等がもらう代金)は、とても安い。
ニュースサイトは、自前で取材するわけではないから、その人件費もかからない。
だから、ニュースサイトが広告収入だけで成り立つのだと思う。
新聞社のデジタル版が、自力で、ニュースサイトに迫るくらいページビュー(PV)を集められれば、広告収入で成り立つかもしれないけども・・・
新聞社のデジタル版の月間PVは大手紙で数億、地方紙で数百万~1千万。
これに対し、ニュースサイト最大手のYahoo!ニュースの場合、月間PVは数十億~200億規模らしい。
この差は大きい。
弊社のデジタル版の月間PVと、弊社がニュースサイトに配信した記事の総計の月間PVを比べると・・・
さすがに弊社のデジタル版の月間PVのほうが多いけど、配信記事の総計月間PVも無視できないボリュームがある。
だから、記事配信料が安くても、Yahoo!ニュース等のニュースサイトに、記事を配信している。
<ポータルサイト化&タブレットとセット>
ニュースサイトに頼らず、新聞社のデジタル版に集客しようと思ったら、ニュースだけ取り扱っていても、ダメだろう。
それこそ、Yahoo!みたいにポータルサイトにならないといけないと思う。
数年前に、その旨、企画書を作って社内で提案した。
あまり詳しくは書けないけど・・・
新聞は、もともと、いろんなジャンルの情報を扱っているから、間口は広い。
取材先の官公庁や広告主の企業とタイアップして、ニュースに限らず、生活情報が得られるとか、商品の広告や書評欄から注文ができるとか、テレビ欄から録画予約ができるとか、株式欄から取引ができるとか、そんなイメージ。
そして、弊社のデジタル版をポータルサイトとして設定したタブレット端末(iPad)とセットで売る。ここがミソ。
タブレット端末を手にしたら、自然に弊社のデジタル版に触れてもらえると思う。
新聞購読者は高齢者が多いのだけど、デジタル版に興味を持っていても「どうやったらいいか、わからない」との声が少なくない。
最初から設定しておいたら、そのハードルがなくなる。
しかも、そのタブレット端末を使う間、弊紙のデジタル版の購読をやめられないプランにしたら、購読中止を食い止めることにもつながると思う。
新聞社は、昔と比べて衰えたとはいえ、信頼性がある。官公庁や企業とタッグを組めると思う。
地域のデジタル化を進めるという大義名分を掲げて、官公庁にタブレット端末の購入補助制度を設けてもらえば、利用者にとって、購入のハードルは下がると思う。
私が提案した時は、取締役の1人が「検討してみる」と興味を示してくれた。
だけど、その後、音沙汰なし。
たぶん、忘れ去られたか、ほかの取締役に興味を持ってもらえなかったのだろう。
残念なことだ。
たとえば、ケーブルテレビ会社は、高速通信サービスはもちろん、スマホも取り扱い、官公庁とタッグを組んで高齢者向けスマホ使い方教室を開いたりして、さりげなく、顧客を開拓している。
単に紙の新聞をそのままデジタル化して満足するのではなく、デジタル機器と結びついていけば、新聞社の生き残りは図れると思うのだけど・・・
弊社の上の方々に理解してもらうことのほうが、ハードルが高そうだ。
