【事例1】
君が空から降りてきた時、ドキドキしたんだ
きっと、素敵なことが始まったんだって───
宮崎駿アニメ「天空の城ラピュタ」(1986年)で、主人公の少年パズーのこのセリフが大好きだ。
物語序盤で、パズーは、空から降りてきた謎の少女シータを助け、悪人に追われる。
不思議な石「飛行石」の力で危機を切り抜け、一息ついたところでシータが言う。
「ごめんね、私のせいでパズーをひどい目に遭わせて」と。
それにパズーが答えたのが冒頭の言葉だ。
───以上、このブログの記事「天空の城ラピュタ」の冒頭を抜粋───
このブログの「読書」「映画」カテゴリーのレビュー記事では、登場人物のセリフをよく引用している。
新聞記者として身に付いた「俯瞰とクローズアップ(鳥の目・虫の目)」の応用だ。
「俯瞰とクローズアップ」は、絵画展の記事で例えると・・・
「どこそこ美術館で、グラフィックデザイナー、アルフォンス・ミュシャの企画展が開かれている。ポスターやカレンダー、食品のパッケージなど100点を展示しており、アールヌーボーの旗手の画業がたどれる」という風に全体像をサラッと収めつつ・・・
「展示作品のうち、『サロン・デ・サン』は、女性の意志の強そうな目が印象的。帽子の細かな模様や花の飾り、大きくカーブを描く長髪が装飾性を高めている」という風にピンポイントで掘り下げる書き方。
記事を短くまとめながら、「何が起きているのか」という全体像と、「具体的なイメージ」を伝えられる。
漫画や小説、映画のレビューでも、セリフがひと言あるだけで、途端に、イメージが具体的になり、レビューが生き生きしてくると思うけど、どうだろうか。
以下に、このブログの記事「映画『国宝』」の一部を抜粋してみる。
【事例2】
糖尿病を患って足を失いながらも、悲恋物語「曾根崎心中」の主役・お初を演じたいという俊介の思いに応え、喜久雄が徳兵衛(お初の恋人)を演じて支える舞台が、クライマックス。
喜久雄が「最後まで、やれるわな」と声をかけ、俊介が「当たり前やろ。誰にもの言うてんねん」と返すシーンが、グッとくる。
───以上、抜粋───
実際、漫画や小説、映画を見ると、ストーリーもさることながら、印象的なセリフが頭に残るのではないだろうか。
私は、セリフの魅力も伝えたい。
SEO(検索エンジン最適化)の効果があるかどうかは、わからないけども・・・
細かくセリフを交えて考察するレビューは、あまり見たことがないから、このブログの特色になるのではないかと期待している。
私は、漫画や小説、映画のレビューを書く時、人間ドラマに焦点を当てることが多いから、自然とセリフが多くなるという側面もある。
登場人物の心理に迫ると、自分の経験とも絡められるから、話が膨らませやすい。
読者にとっても、感情移入や自己投影がしやすくなるのではないか。
この場面で自分ならどう言うか、と考えたりして。
なぜ、この登場人物は、この場面でこう言ったのかという会話の考察は、コミュニケーション術や駆け引きの分析に発展することもある。
こうなると、対人関係やビジネスにも応用できるスキルになる。
私は、たとえば、本宮ひろ志の漫画「赤龍王」のレビューでは、「劉邦と虞美人のすれ違いの悲恋」にスポットを当てて掘り下げた。
虞美人が劉邦に仕掛けた心理戦とも言える会話は、特に面白い。
「赤龍王」のレビューで、その心理戦の部分を末尾に抜粋して、この記事を締めくくる。
あ、セリフを軸にしたレビューを書く時、私は、まず、どういう切り口で書くかというアイデアと、これはというセリフを抜き出したメモ書きを作る。
私が「赤龍王」のレビューを書く前に作ったメモ書きも、末尾に引用しておく。
(このメモ書きを見て、イメージを膨らませて肉付けし、レビュー記事に仕上げた)。
<記事「赤龍王」の一部抜粋>
「再会その2」は、劉邦が、項羽の留守中に本拠地を攻めて発生。
劉邦は再会を喜んで、虞美人に抱きつく。
2人のやり取りを以下に抜粋してみる。
劉邦
虞よォー。会いたかった、会いたかったぞォー。よくぞ、よくぞ、生きていてくれた。虞よォー
虞美人
舌を噛み切ります
劉邦
なっ
虞美人
私に手を触れたら、私は舌を噛み切って死にます
劉邦
何ィー
虞美人
私は項羽の妻
劉邦
虞っ
虞美人
あなたの敵王の妻です。どうか、そのように処分してくださいませ
劉邦
惚れたのか。殺されてもいいというほど、項羽に惚れたのかあっ
虞美人
はい
(以上、抜粋)
この「再会その2」は、劉邦にとって、最後のチャンスだった。
虞美人の「舌を噛み切ります」は、ハッタリだと、私は想像する。
この言葉は、項羽への愛ではない。
また、腰が引けるのか、劉邦を試したのだ。
この場面、劉邦をさえぎる敵はいない。
劉邦と虞美人の2人だけ。
この場面は、虞美人が仕掛けた「心理戦」だったのだ。
劉邦は、構わず、虞美人を強く抱きしめるべきだった。
「そんなこと、させるか。おまえはおれの女だ」と叫んで。
ところが、この場面で、劉邦は最悪の手を打つ。
「惚れたのか。殺されてもいいというほど、項羽に惚れたのかあっ」という的外れなセリフが、そうだ。
このセリフは、虞美人が劉邦に失望していることをわかっていないだけでない。
「心変わりしたのか」と虞美人を責めている。
虞美人の心の傷を癒やすどころか、傷に塩を塗り込む痛恨の一撃。
再会直後の虞美人の表情と見比べてほしい。
「はい」と答えた虞美人は、深い絶望の淵にいることがわかるはずだ。
───以上、抜粋───
<記事「赤龍王」の基にしたメモ書き>
「赤龍王」本宮ひろ志
虞美人をめぐる劉邦と項羽の三角関係
虞美人が庶民の頃の劉邦と出会い夫婦になっていたという設定が秀逸
たぶん、虞美人は、最後まで劉邦を思い続けていたと思う
項羽に情がわいたのも事実だろうけど。
ラストでもう一工夫あると完璧だった
項羽の死で締めくくるのはいいけども、もうひとつ
これは、物語の冒頭の言葉で出ているのだけども
なんか、劉邦が虞美人をしのんで悲しむ描写がほしかった
遺品を見つけて、涙を流すとか
劉邦
おれは、この娘と一緒になれるんなら、何も望まねえで百姓をやる
虞美人
優しい、思いやりのある人の元へ嫁いで、その人と2人で土に働き、作物を実らせることが、、、
可愛い子をたくさん産み、その人とその人との子どもたちと春と夏と秋を感じながら生きることが、、、
虞の一生の夢でした
その夢が今、叶い、その夢に思っていた男の人があなたであることが、私は涙が出てくるほど、幸せです
劉邦さま、離さないで。私をどこにもやらないで。一生、あなたのそばに置いてください
劉邦
離すもんか。おまえはおれの女だ。おれだけの女だ
始皇帝の手下に連れ去られる
虞美人
嫌です。私は行きたくない。劉邦さま、私をどこへもやらないでください
劉邦さま、あなたはおっしゃったではありませんか。虞はおれの女だ、どこにもやらぬ、一生、おれのそばで暮らせ、と。
虞は、あなたのそばで暮らしたい。どこにもやらないで。助けてください。劉邦さまァー
呂雉
女のにおいがする。この部屋には女のにおいが残っています。私が来る前、誰か女の人が住んでいたのですか
私があなたのところに来る前、何があったのか、何も聞きません。しかし、今、私とあなたの血はひとつになったのです。これからは私以外の女を求めることは絶対に許しません。
劉邦、関中に一番乗り
虞美人を探して阿房宮へ
劉邦、再会に涙を流す
生きていたか
生きていてくれたか、虞よぉーっ
会いたかった、会いたかったぞォー
虞美人、複雑な表情
劉邦
おれは、おまえさえ、そばにいてくれたら、百姓として一生終えることに何の不満もなかった
しかし、こうして咸陽を制圧し、関中王として、この大地を押さえた今、おれは、おまえのために何でもしてやれる。金銀宝石で飾り、この阿房宮をおまえの屋敷とし、関中の民は、すべて、おまえの民だ
ど、どうした虞よ。なぜ、そのような目をする。おまえには、このわしの熱い思いが伝わらぬのか
虞美人は、こいつ、わかってないなという気持ちだったと思う
北斗の拳のシンとユリアを思い出す
しかし、項羽が来て、すべて奪われる
虞美人も
項羽
この項羽、生まれて初めて女に心を奪われた
劉邦、欲しくば、剣を取れ
力で奪ってみィー
かかってこい、劉邦
この女が大事なら、おれから奪えいっ
剣に手をかける劉邦、見守る虞美人
けど、劉邦は戦わない
虞美人、涙
劉邦さま、あなたは、あなたは、また、私を守ってくださらぬのですか
のちの戦い
項羽の本拠地を攻め、虞美人と再会
劉邦
虞よォー
会いたかった、会いたかったぞォー
よくぞ、よくぞ、生きていてくれた
虞よォー
虞美人
舌を噛み切ります
劉邦
なっ
虞美人
私に手を触れたら、私は舌を噛み切って死にます
劉邦
何ィー
虞美人
私は項羽の妻
劉邦
虞っ
虞美人
あなたの敵王の妻です。どうか、そのように処分してくださいませ
劉邦
惚れたのか
殺されてもいいというほど、項羽に惚れたのかあっ
虞美人
はい
たぶん、そうじゃない
そう言われて、あっさり引いた劉邦が悪かった
項羽に惚れたというより、劉邦に失望したことに気づかないといけなかった
呂雉に見つかる
呂雉
同じじゃ。同じにおいじゃ
私が初めて劉邦の元へ嫁に行き、あの部屋でかいだにおいと、あの部屋に残っていたにおいと同じ、、、
この顔か、この体か、あの部屋でわが夫・劉邦にまとわりついていたのは。あさましい、あさましい。
呂雉、虞美人を殺そうとする
曹参が来て助ける。項羽の妻で、大事な人質だと説明
呂雉
なるほど、これがそうか。始皇帝に抱かれるために作られ、始皇帝の子、二世皇帝・胡亥のオモチャになり、その後、次々と時の権力者に抱かれ続けた女というのは。そして、今は項羽のものか。ふっふふ。
そのような汚らわしい女なら、何も私が自ら手を下すことはないか。汚らわしい、汚らわしい、わあっははは。
四面楚歌
虞美人
私は殿方に抱かれるために育てられ、生きてきた女です。生きることをやめ、何度も死のうと思いました。
項羽さまを知り、生まれて良かった、生きてきて良かったと心の底から思うております。
ああっ項羽さま。虞は、虞は、幸せでごさいました
───以上、メモ書き───
