「死体を探せ!」布施英利
最近読んだ本からもう1冊。
美術と医学、両方の視点を持つ著者ならではの評論。
以前、たしか「24人のビリー・ミリガン」に書いてあったセリフが気に入り、レオナルド・ダ・ヴィンチを引き合いに出して、Facebookに書いたことがあるが、美術と医学は近しい関係のようだ。
この本「死体を探せ!」にはもちろん、ダ・ヴィンチのことも出てくる。
著者によると、ダ・ヴィンチ以前のヨーロッパでは「ダンス・マカブル」と呼ばれる、踊る骸骨の絵が描かれた。
解剖図に描かれる骸骨も、生きているかのように、ポーズを取っている。
(ダンス・マカブルと言うと、荒木飛呂彦の「ゴージャス☆アイリン」の必殺技や「ジョジョの奇妙な冒険」に出てくる黒騎士ブラフォードの必殺技ダンス・マカブヘアーを思い出してしまう)。
これに対し、ダ・ヴィンチの手による解剖図は、本当に死んでいるように、死体が死体として描かれているのだという。
ルネサンス時代の画家たちは、人体をリアルに描くためには、皮膚の下にある筋肉や骨の形も知らないといけないと考え、解剖学を学んだが、中でも突出していたのが、ダ・ヴィンチ。
死体を物として見る「冷たい眼差し」があったらしい。
なんか、分かったような分からないような・・・
ダ・ヴィンチの話はさておき・・・
読んで、一番面白いと思ったのは「ターヘル・アナトミア」と「解体新書」に描かれている人体の違い、というか、ヨーロッパと日本の絵の描き方の違いの話。
解体新書は、ターヘル・アナトミアを和訳した本で、解剖図も写して描いているのだけど、見比べると、たしかに違う。
ターヘル・アナトミアの場合は、人体の絵に輪郭線はなく、陰影で立体感を表して描かれている。
解体新書は輪郭線で描かれている。
ヨーロッパと日本の文化の違いということのようだ。
そう言われてみれば、日本の絵は輪郭線で描くような気がする。浮世絵が好例。
著者によると、ヨーロッパの絵は見たままリアルに描写、日本の絵はイメージで描く絵だという。
面白いと思った。
(2015年8月15日Facebook投稿を転載)