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「バルジ大作戦」(1965年、米国) 悪役感と神秘性が漂うナチスドイツ親衛隊の制服 おそらく最も似合う男がヘスラー大佐

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「バルジ大作戦」(1965年、米国)

「Battle Of The Bulge」

 

黒ずくめにドクロのマーク。どう見ても、悪役感たっぷりだ。

そして、かっこいい。

機能性が重視されるはずの軍服でかっこよさ第一という発想が異彩を放つ。

 

「ナチ独逸ミリタリー・ルック」より。親衛隊の制服

例えば、黒色は汚れが目立ったという。また、スリムな体形の人にしか似合わないデザインだとされる。

それでも、かっこよさを重視したのは、着る将兵のエリート感やわくわく感の向上、敵に与える威圧感、恐怖感の増強を狙ったのだろうか。

 

かっこいい軍服と言えば、第2次世界大戦中のナチスドイツ親衛隊(シュツシュタッフェル=SS)をおいて、ほかにない。

これと比べれば、同時代の米国や日本の軍服は、作業服だ。

 

そもそも、徴兵されて入る通常の「国防軍」とは別に、志願者の中から選りすぐった「親衛隊」を組織したという発想が興味深い。

 

親衛隊の制服の黒色は「高貴な部隊」を表すという(ただし、親衛隊も戦闘時に着る野戦服は、緑っぽい灰色。戦車兵は、国防軍も親衛隊も黒色の制服)。

 

そして帽子や襟に付く「トーテンコップ」(ドクロ)のマークは、海賊旗のように威嚇の意味合いではなく、「骨になっても戦う」という決意が込められているという。

 

 

さらに、親衛隊の部隊のマークには、古代ゲルマン人の「ルーン文字」が使われ、ナチスドイツの旗のマーク「ハーケンクロイツ」と同様、神秘性を醸し出した。

 

「ナチ独逸ミリタリー・ルック」より。親衛隊の戦闘服

「ナチ独逸ミリタリー・ルック」より。親衛隊のヘルメット。マークはルーン文字の「SS」

 

部隊の名前も雰囲気十分。

第2SS装甲師団ダス・ライヒ(帝国)、第3SS装甲師団トーテンコップ(ドクロ)、第5SS装甲師団ヴィーキング(バイキング)といった具合だ。

 

ドイツは、軍服の機能性を無視していたわけではない。

大戦後期には、親衛隊向けに「迷彩」の戦闘服が制式化された。今では珍しくない迷彩の軍服が制式化されたのは、たしか、これが世界初だと思う。

 

 

ナチスドイツ親衛隊の制服が、おそらく、最も似合う男がヘスラー大佐。

映画「バルジ大作戦」(1965年、米国)に登場するドイツの将校だ。

私は、小学生の頃、テレビで放送されたのを見て、惹かれた。

名優ロバート・ショウが好演しており、これが実にかっこいい。

この映画では、やられ役扱いだったけども、ヘスラー大佐が主役だと思って見た。

 


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この映画は、第2次世界大戦末期、劣勢のドイツが米国など連合軍に対して最後の反抗を試みた「バルジの戦い」を描く。

ヘスラー大佐は架空の人物。バルジの戦いでドイツ軍の主力となった武装親衛隊(ヴァッフェンSS)のヨーヘン・パイパー中佐をモデルにしたと思われる。

 

 

だから、ヘスラー大佐は、武装親衛隊の将校として登場するべきだったと思うが、なぜか、国防軍の将校のように描かれている(軍服を見る限り)。

「おそらく、親衛隊の制服が最も似合う男」と言ってはみたけど、この映画に親衛隊の制服姿は出てこない。戦車兵の黒服姿は出てくるので、雰囲気は味わえるけど。

きっと、親衛隊の制服姿だったら、もっと、かっこよかった。

なぜ、親衛隊の将校として描かなかったのか、不思議だし、残念だ。

 

劇中、新鋭戦車「タイガー2」(キングタイガー)として登場するのは、どう見ても、戦後の米国製戦車パットン。

まあ、仕方ない。キングタイガーの実車が映画撮影に使えるような良いコンディションで何台も残っているとは思えない。そこは大人の事情ということだ。

でも、これがキングタイガーに見えてくるのだ。ヘスラー大佐が乗ると。

 

(なお、上記の商品「ドイツ連邦軍戦車M47パットン」は、戦後の旧西ドイツ軍仕様のパットン。「バルジ大作戦」に出た「キングタイガー」の気分を味わってもらおうという趣向か)

 

へスラー大佐は最後、ガソリンの入ったドラム缶を転がして爆発させるという米軍のしょうもない戦法によって、自称「キングタイガー」もろとも、爆死する。

その直前、部下の戦車兵は、びびって逃げるのだけども、へスラー大佐は自ら操縦席に座り、戦い続けようとしていた。

この漢(おとこ)ぶりと、あっけない爆死のギャップがよかった。

 


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ちなみに、ショウは、映画「ジョーズ」(1975年、米国)にも荒くれ者のサメハンター、クイント役で出演。最後に、ジョーズにバックリと食われてしまう。

注目したいのは、その後。

ロイ・シャイダーが演じる主役の警察署長ブロディが、船にあった酸素ボンベをジョーズの口に押し込み、ライフルで撃って爆発させ、ジョーズを倒す。

あの~、たぶん死んだとはいえ、クイント(ショウ)がそこにいるんですけど、という感じ。この俳優、また、爆発ですか、と頬が緩んだ。

 


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ジョーズ (字幕版)

ジョーズ (字幕版)

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やがて、私は、ミリタリーファンになり、中学〜大学時代は雑誌「コンバットマガジン」を愛読した。

ナチスドイツ親衛隊の制服は高くて買えなかったが、通販のページを眺めているだけで楽しかった。

親衛隊の制服を着て、短機関銃MP40を携える姿を想像したものだ。

 

 

ちなみに、MP40は、ナチスドイツを象徴する名銃だと思うけど、当時はモデルガンもエアソフトガンもいい製品がなかったと思う。

最近、デニックス製の装飾銃(モデルガンではないし、エアソフトガンでもないので、動かない)を見つけたが、高いので、ちょっと手が出ない。

 

 

漫画家・新谷かおるの「戦場ロマン・シリーズ」にも、ナチスドイツの親衛隊が登場するエピソードがある。

単行本第4巻「暗黒戦士」収録の「ヴァッフェンSS」。

これが、また、かっこいい。

 

戦場ロマン・シリーズ第4巻「暗黒戦士」より。「ヴァッフェンSS」の一場面

親衛隊の制服は、細身のキャラクターが得意な新谷の絵柄と相性が良い。より、かっこよく見える。

作中で、親衛隊のベッケル少尉は、敵の爆弾兵器によって、タイガー戦車もろとも、爆死する。

また、爆発ですか、と思った。

 

 

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今週のお題「制服」