
「12の月の物語」池田あきこ
先日、島根県立美術館(松江市)を訪ねて、洋画家・岡鹿之助の作品「古港」を見たら、ふと、「わちふぃーるど」の地図が見たくなった。
ちなみに、「古港」は、点描のような技法を模索していた頃の作品らしい。ちょっと幻想的で、郷愁を誘われる。

島根県立美術館は、宍道湖のほとりにあり、クールベの「波」、モネの「アヴァルの門」など「水」をテーマにした作品の収集に力を入れている。
<わちふぃーるどの地図>
わちふぃーるどは、絵本作家・池田あきこが創作した世界。人気キャラクターのダヤンたちが住んでいる。

わちふぃーるどの地図は、古地図っぽい雰囲気がいい。
さらに、ライオン三兄弟がいるらしい「ジャングル・ボウボウ」、昔の都市の遺跡らしい「アルトス・セテ」、モグラ叩きみたいな謎の生物ミュートが住むらしい「ミュート・ランド」といった具合に書き込んであるのを見ると、いろいろと想像が膨らみ、眺めていて、飽きない。
わちふぃーるどの地図は、昔、ジグソーパズルを買って完成させたけど、すぐには出てこないので、とりあえず、手持ちの文庫本「12の月の物語」を開いた。
私は、中学時代、テーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や、「火吹山の魔法使い」「ソーサリー」といったゲームブックに、はまった。
そんな「剣と魔法の世界」の地図も、わちふぃーるどの地図を見ていると、思い出す。
ダンジョンズ&ドラゴンズやゲームブックについては、いずれ書くつもりだ。
(Amazon商品を探してみたら「ダンジョンズ&ドラゴンズ」、とんでもないプレミア価格で出品されている。「ベーシックルールセット」が3万4150円とは。たしか、定価は5000円くらいだった。本当に買うなら、ヤフオクがおすすめ。Amazonより安く買える。ゲームブックはAmazonもヤフオクも同程度か。定価よりは高い)
もともと、地図そのものが好きで、道路地図でも眺めていて楽しいと感じるタイプだけど、古地図は特に好き。
大学時代に古地図に関する授業を受けて、興味が増した。
マッパ・ムンディとか、マテオ・リッチとかいう単語を聞くと、わくわくする。
大航海時代を舞台に世界地図完成を目指すコンピューターゲーム「アトラス」にも、のめり込んだものだ。
伊能忠敬が作った日本地図の部分的なレプリカも買って持っている(ただし、どこにいったか、わからない)。
私は、地形を測って地図を作る「測量」の仕事に携わった経験がある。
基本的な技術は江戸時代も現代も変わらないから、忠敬が測量する姿が想像できるし、親近感がわく。
<本題・「12の月の物語」について>
本書「12の月の物語」は、24編の短い物語を収めてある。
そのひとつ「イワンとイワシ」は、因幡の白兎を思い起こさせる物語だ。
海に出て迷ったワニのイワンが、イワシの群れに出会い、陸地まで道案内してもらう。
イワシが好物のイワンは道中、1匹また1匹とイワシを食べていく。
最後に残ったイワシは仲間がいなくなったことに気づいて「僕が迷子になった」と泣き出す。
「情け深いイワンは、気の毒なことをしたと思い、もらい泣きしながら、迷子のイワシを仲間と一緒にしてやりました」という結末がいい。食べたってこと。

「ダヤンのトランク」という物語もいい。
歯ブラシを入れろ、イワシの缶詰は入れるななどと指図する、うるさいトランク。
壊れて、直してもらったら、しゃべらなくなったけど、「トランクの顔を立てるために、ダヤンは歯ブラシも持っていくことにしました」という結末。
ダヤンの性格がうかがえて、面白い。

24編の物語で、わちふぃーるどがすべて網羅されているわけではない。
例えば、ジャングル・ボウボウやアルトス・セテ、ミュート・ランドは出てこない(ダヤンシリーズのほかの作品で描かれているのかもしれないけど)。
これがいい。
読者が地図を見ながら、自由に想像して楽しむ余地が残してある。








