「アオシマプラモの世界」はぬまあん
幼い頃、作って遊んだ「宇宙空母(スペースキャリア)レッドホーク」が懐かしくなった。
個性派の模型メーカー、アオシマが放ったオリジナルメカのプラモデル「合体マシン」シリーズの代表作。
例えば、宇宙空母レッドホークの場合だと、艦前方の上部分(飛行甲板)となる「デリックマシン」、前方下部分となる「パラボラマシン」、艦橋部分となる「コマンダマシン」、後部となる「コスモスマシン」という四つの商品に分かれている。
それぞれがパーツの組み替えで、ロボットとなるほか、4点買いそろえて合体させると、宇宙空母レッドホークになるという趣向。
これは、子ども心をつかみ過ぎる。
「マシン」「合体」というキーワードが刺さるうえ、設定と異なる自由な組み替えの余地を残しており、子どもの特技「俺設定」が生み出される。
ここまで、子どもの想像力を育むプラモがほかにあるだろうか。
本書「アオシマプラモの世界」は、合体マシンシリーズはもとより、アニメ「伝説巨神イデオン」関連などアオシマ製品の数々を紹介する。
見どころは、合体マシンシリーズ。
宇宙空母レッドホークは特に気に入っていたので、私が大人になってからも、捨てられずに実家に残っていた(さすがに現在までは、残っていないと思うが)。
1980年代半ばの品で、松本零士原作のアニメ「宇宙戦艦ヤマト」が大人気だった世相を反映している。
戦艦ではなく、空母というところに目新しさを感じた。
「宇宙戦艦ヤマト」にも、ガミラスの「二連三段空母」とか空母はあった。これは、これでかっこいいと思うし、プラモも持っていた。
しかし、宇宙空母レッドホークは、ガッチリと子ども心をとらえる造形だった。
まず、飛行甲板の前方に突出部があること。これが、空母感を絶妙に高めている。
大人になってから知ったところでは、この突出部は「ブライドル・レトリーバー」「ブライドル・キャッチャー」などと呼ばれる装置。
艦載機をカタパルトで飛び立たせる時に使う「ブライドル」というワイヤーを回収する装置で、米海軍のエンタープライズなど、昔の空母には付いていた。
そして、左右に広がる細い飛行甲板(?)。
大人目線だと、実用性に疑問が生じるが、こういう仕掛けは子どもの心拍数を上げる。
アオシマオリジナルの漫画本「レッドホーク」では、たしか、この細い飛行甲板をぶつけて敵メカを倒すシーンがあったように思う。
本書「アオシマプラモの世界」の解説ページにある言葉「く…空母って、あんな使いかたもできるのか」は、その場面での登場人物のセリフだったと思う。
極めつけは、艦底に取り付けられた大型のキャタピラだ。
艦のサイズを考えたら、この程度のキャタピラで自走できるとは思えないが(大人目線)、「もしかして、地上走行もできるのか」と、子どもは、ますます空想を膨らませてしまう。
私はもう少し成長してから、航空アクション漫画の名作「エリア88」(新谷かおる)を知るのだが、「エリア88」で地上空母(キャタピラで走る)が登場した時には、宇宙空母レッドホークを思い出したものだ。
合体マシンシリーズの戦艦「レッドホークヤマト」も、ロボット「アトランジャー」も、アトランジャーを収容する母艦「タイガーシャーク」も、プラモで持っていた。
アオシマコミックスというオリジナルの漫画本は、レッドホークシリーズの3部作「レッドホーク」「レッドホークヤマトⅡ」「レッドホーク連合艦隊」は持っていた。
敵の作戦で、土星の輪をカッター代わりにして、地球をガリガリ切ろうとするという場面が記憶に残っている。
この漫画、とても懐かしいけど、現在、行方不明だ。
Kindle版が出ているので、あらためて実家を探索してみて見つからなければ、Kindle版で買うかもしれない。