TOTO「TOTOⅣ~聖なる剣」
1980年代はハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)とアダルト・オリエンテッド・ロック(AOR)という対照的なロックが同時に盛り上がった。
HR/HMが「悪ガキのロック」だとすれば、AORは「洗練された大人のロック」。AORは廃れたが、代表格のバンド、TOTOは今聴いても、色あせていない。
一番好きな曲は、1982年のアルバム「TOTOⅣ~聖なる剣」に収録されたヒット曲「アフリカ」。
ドラムのループに続き、ブラス&マリンバ風のシンセサイザーのメロディーが広がってアフリカの大地を想像させ、美しいコーラスも相まって癒やされる。
「アフリカに恵みの雨が降りますように」という趣旨の歌詞も、味わい深い。
アフリカの飢餓救済に関心が高まり、米国の人気歌手たちのチャリティーソング「ウィー・アー・ザ・ワールド」(1985年)が生まれた世相を感じさせる。
同じく「聖なる剣」収録の「ロザーナ」はリズミカルな歌い方がいい。シンセやギターのソロも聴きどころだ。
聴きやすさに耳を奪われがちで、高度な演奏技術がさりげなくしのばせてあることは、後に知った。
例えば「ロザーナ」でドラム奏者ジェフ・ポーカロが見せるハーフタイム・シャッフル。ポーカロと同様にスティーリー・ダンのアルバムに参加したバーナード・パーディーや、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムの演奏に触発された超絶技巧なのだとか。