「アップルデザイン」ポール・クンケル著、大谷和利訳
久しく触れていないが、Macintoshが好きだ。
私が初めて買ったパソコンはMacだった。
新聞社に入社1年目の1994年に当時、新製品だったPerforma(パフォーマ)5220を選んだ。
ディスプレイ一体型で、クラリスワークス等のソフトが付属する家庭向け、初心者向けの機種だった。
当時、コラージュの真似事みたいな遊びをしており、その過程で、Photoshopという画像処理ソフトに惹かれ、Macで使えると知ったのがきっかけ。
実際に買ってみると、Macそのものにのめり込んだ。
Macを使い、コラージュ遊びの幅が広がったのは、もちろんのこと。
当時、新聞社で紙面レイアウトや見出しの考案をする「整理部」という部署に配属されたこともあって、Illustratorというグラフィックソフトも買い、DTPの真似事みたいなことも楽しんだ。
何より、Macそのものが面白かった。
まさに直感的に操作できるMacOSは、パソコン初心者の私を虜にした。
「機能拡張マネージャ」を使って、初心者でも気軽にシステムをいじれるのも、よかった。
起動しないなど、やたらにトラブルが多かったけども、そこも愛嬌という感じだった。
そして、マシンそのものがかっこいい。モノとしてほしくなる姿をしている。
持っているだけで、わくわくし、使うとさらに、わくわくする。
それがMacだった。
会社の制作部門には、Quadra(クアドラ)が置いてあった。
既に旧式化してはいたが、いつか、私もプロ向け機種のMacがほしいな、と思ったものだ。
1997年に、20周年Mac(愛称スパルタカス)が発売されると、すっかり、目を奪われた。
これは、かっこいい。
100万円近い高値だったので、手が出ないなと思っていた。
当時、妻が妊娠し、長女の出産を控えており、これから子育てにもお金がかかるのに、趣味のパソコンどころではないなとも思っていた。
だけども、店頭で現物を見たら、無性にほしくなり、衝動買いしてしまった。
スパルタカスは、性能の割に高価なため、売れ行きが思わしくなく、その後、値崩れしたのだけども、損したとは思わなかった。
眺めているだけで、想像力と創造力が高まるようなデザイン。
BOSEの低音スピーカーが付いており、♪ボ~ン…という独特の起動音に、心躍らされたものだ。
その後、整理部から報道部(記者職)に異動。
支給されたノートパソコンがいわゆるWindowsパソコン(IBMのThinkPadだったと思う)で、仕事の多忙さも相まって、Macからは遠のいた。
Macにさわらなくなって久しいけども、Macには楽しい思い出ばかりだ。
(パフォーマも、スパルタカスも、時が経つにつれ、実用的な性能ではなくなったので、惜しかったけども、廃棄した)。
本書「アップルデザイン」は、試作品やデザイン案を含め、アップル社のインダストリアルデザイングループの仕事を豊富な写真で紹介している。
眺めていて、楽しい。
見どころは、1998年の本書発刊当時、まだ話題性があったスパルタカスのデザインが決まる過程だ。
最終的に採用されたパネル型のデザインも、当初の案では、もっと横長だった。
ほかに、カーブした木材を使ったデザイン案も面白い。
人気の高い機種ColorClassicのように、足が付いたデザイン案も面白い。カラクラより、足がもっと長く、戸棚のように扉が付いているのもユニークだ。
パネル型のデザインが選ばれ、さらに練り上げられる。
その過程のデザイン案で、横長から正方形になり、ユーザーを包み込むように、パネルが湾曲しているものが素晴らしい。
最終的には、湾曲のないデザインに落ち着いた。
キーボードのパームレストは当初、木材が想定されたが、黒い革製に決まったという。
あらためて歴代のMacを見ると、カラクラもなかなか、いい。
生き物がちょこんと鎮座しているようなかわいらしいデザインで、人気が高く、中身を現役で使えるように改造するファンもいる。
(私も改造本を持っている。カラクラは持っていないけど、見ているだけで、面白い)。
そして、初代Mac。
高さを調整できるスタンド付きというデザイン案もあったようだ。
現在、私が業務で使うノートパソコンは、富士通のLIFEBOOK。
いかにも、事務用品です、という姿で、ちっとも、わくわくしない。
もし、またMacを買うとしたら、持ち運べて使いやすいMacBookになるのだろうし、Macはノート型も十分すぎるほど、かっこいいのだけど、、、
Macのデザインの神髄は、初代Mac、カラクラ、パフォーマ、スパルタカス、そして本書発刊後に現れたiMacといった一体型の機種にあると思う。