QNTAL「QNTALⅢ」
ドイツの古楽エレクトロニカバンド、QNTALは中世ヨーロッパの音楽や詩に電子音のビートを加えて現代風にアレンジする。
リュート、フィドルといった中世の弦楽器を奏で、ラテン語や中世のドイツ語、フランス語を使い分けて歌う。
少しダークでロマンチックな音楽に仕上げており、歌手のシラーこと、シグリッド・ハウゼンは硬質な美声が映える。
バンド名QNTALは、シラーがひらめいた造語で「カンタル」と発音するのだとか。
中世の音楽や詩を現代風にアレンジし、古語で歌うという発想が面白い。
日本で例えるなら、雅楽と電子音楽のコラボ。
平家物語や枕草子を題材に、琵琶の演奏のほか、電子音のビートを加えて、古語で歌うという感じでもいいかもしれない。
QNTALらしさがよく味わえるアルバムは、2003年の「QNTALⅢ」。
収録曲「Ecce Gratum」は、♪チャン、チャンチャチャン…と奏でるリュート、♪モワーン、モワーン…という電子音の中で、♪キュッキュキュッ、キュキュキュッ…と躍動するフィドルの演奏がスリリングだ。
ラテンっぽいリズムで、シラーは早口のラテン語で歌う。
「Ecce Gratum」は、中世ヨーロッパの聖職者が作ったラテン語の詩で、20世紀に入ってから音楽化されたようだ。
この音楽もネットで探して聴いてみたが、QNTALの曲とは、雰囲気が全く違う。
収録曲「Entre Moi Et Mon Amin」は、このアルバムのリミックス集と言える2004年の「イルミネート」に収録されたシングル版がおすすめ。
「Entre Moi (Single)」というタイトルで、電子音が強めの躍動的な曲にアレンジしてある。
シラーの美声がよく味わえ、QNTALの曲で一番好きだ。
重々しいビートで始まるが、ポップで聴きやすい曲に仕上げてあり、途中にリュートのソロもある。
おそらく、中世フランス語で歌っている。
アルバム「QNTALⅢ」は、ほかにも良い曲がそろう。
「Am Morgen Fruo」はキャッチーで聴きやすいメロディー。
おそらく、中世ドイツ語で歌っており、これも美声の伸びがすごい。
「Name Der Rose」も聴きやすい。歌はラテン語。
1995年のアルバム「QNTALⅡ」に収録された曲「Fruhling」(「u」は上に2個の点がある字。ドイツ語のウーウムラウト)を聴いてQNTALを知り、気に入った。
この曲は、電子音が強めで、中世っぽさはあまり感じないけど、シラーの美声に引き込まれた。
QNTALのメンバーは「エスタンピー」という別名義のバンドでは、電子音抜きのアコースティックな古楽を追求している。
QNTALとは、だいぶん、趣が違うが、こちらもいい。癒やされる感じの音楽だ。
「Summerwunne」「Fin Amor」の2曲を紹介しておく。