カーズ「ドライブ」
The Cars 「Drive」
私が洋楽の歌を聴く時に、歌詞の意味を味わう歌と言えば、ロックバンド、カーズの「ドライブ」「バイ・バイ・ラブ」も外せない。
デレク・アンド・ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」の場合と同様に、失恋を引きずっていた16~17歳ごろに初めて聴いたせいか、歌詞が心に刺さった。
「ドライブ」は、1984年のアルバム「ハートビート・シティ」に収録されたカーズ最大のヒット曲。
シンセサイザーが前面に出た美しいバラードで、「Who’s gonna drive you home tonight ?」(今晩、君は誰に送ってもらうんだろう)という歌詞は、涙が出る。
少し歌詞を引用する(かっこ内は、私の適当な邦訳)。
Who’s gonna tell you when it’s too late
(誰が言うんだい 乗り遅れているって)
Who’s gonna tell you thing aren’t so great
(誰が言うんだい たいしたことじゃないって)
You can’t go on thinking nothing’s wrong
(もう続けられないよ 何も悪くないって思うのなら)
Who’s gonna drive you home tonight
(今晩、君は誰に送ってもらうんだろう)
Who’s gonna pick you up when you fall
(誰か助けてくれるかい 君が倒れたら)
Who’s gonna hang it up when you call
(誰か電話を取ってくれるかい 君がかけたら)
Who’s gonna pay attention to your dream
(誰か気に止めてくれるかい 君が夢を描いたら)
Who’s gonna plug their ears when you scream
(誰か周りの耳を塞いでくれるかい 君が泣き叫んだら)
You can’t go on thinking nothing’s wrong
Who’s gonna drive you home tonight
※※※以下略。引用終わり※※※
彼女が変な誘いに引っかかって悪い方向に進むのを心配しているけど、止められないという状況にいて「本当に心配しているのは僕だけなのに」と嘆いている歌・・・だろうか。
悶々とする、うじうじ男を歌ったというところがいい。
カーズは、ギターを軸にしたロックとキーボードをうまく融合させ、古さと新しさ、ロックとポップスを同時に感じさせる。
曲によって、リック・オケイセック(リズムギター)か、ベンジャミン・オール(ベース)のどちらかがリードボーカルを務めていて、ベンジャミンの歌が好みだ。
「ドライブ」はベンジャミンが歌う。
当時、最もよく聴いた曲は「バイ・バイ・ラブ」。
1978年のアルバム「錯乱のドライブ」に収録されており、ずばり「Bye bye love」という歌詞と、「Always it’s some other guy」(いつも違う男)という歌詞が胸に響く。これも、ベンジャミンが歌う。
歌詞を部分的に引用してみる。
I can’t feel this way much longer
(もう、こんな気持ちではいられない)
Expecting to survive
(うまく生き残れるよう、望んでいる)
=中略=
It’s such a wavy midnight
(波打つ真夜中)
And you slip into insane
(そして、お前は狂気に至る)
=中略=
It’s an orangy sky
(オレンジ色の空)
Always it’s some other guy
(いつも違う男)
It’s just a broken lullaby
(まるで壊れた子守歌だ)
Bye bye love
(さようなら、愛)
※※※以下略。引用終わり※※※
この歌は、何のことだか、よくわからない。
彼女がかなりおかしくなったということだろうか。
でも、なぜ、それで「Bye bye love」なのか。
おかしくなった彼女には、もう付き合いきれないってことだろうか。
海外の掲示板みたいなサイトを見ていたら、「ゴッホのことを表した歌ではないか」という興味深い分析があった。
心を病んで自殺した画家フィンセント・ファン・ゴッホのこと。
その分析によると、「wavy midnight」は、有名な作品「星月夜」にちなむという。
「orangy sky」は、「オリーブ畑とオレンジ色の空」という作品にちなむという。
「Always it’s some other guy」は、ゴッホが一時同棲したシーンという売春婦にちなむという。
本当かどうかは、わからないけども、私は、そういう発想が全くなかったので、なるほど、すごい想像力だなと感服した。
実は、カーズの歌詞、深いかもしれない。
ちなみに、歌詞抜きで考えて好きな曲は「キャンディ・オーに捧ぐ」(1979年の同名アルバムに収録)。
リードギター奏者エリオット・イーストンの演奏がよく味わえるハードな曲で、中ほどに、10秒ほどと短いながら、とてもかっこいいソロがあり、聴きどころ。
要所で印象的なメロディーを滑り込ませるエリオットのギターは、カーズの魅力のひとつだ。
このアルバムはジャケットも秀逸。
セクシーな女性を描くピンナップアートの第一人者アルベルト・バルガスの作品で、いかにもアメリカンな感じがいい。
<追記>2025年3月25日
漫画家・荒木飛呂彦が代表作「ジョジョの奇妙な冒険」で、ミュージシャンや曲の名前から、キャラクターやスタンドの名前を付けていることは、よく知られる。第2部「戦闘潮流」の敵役・カーズの頭巾をかぶった姿は、ロックバンド、カーズのアルバム「ハートビート・シティ」のジャケットにあるリック・オケイセックの姿がヒントになっているのではないかと思う。