てっちレビュー

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ジョン・マクラフリンの味わい方(名曲名盤ガイド5本パック) 忖度なしに前に出てジャコやサンタナをかすませる 真骨頂はマハヴィシュヌ・オーケストラとシャクティ カオスな掛け合いが圧巻だ

Shakti With John McLaughlin: A Handful of Beauty

Shakti With John McLaughlin: A Handful of Beauty

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(詳しくはリンク先の各記事へ。随時、追加・更新)

 

ジャズギター奏者ジョン・マクラフリン(1942年~)は、これ見よがしで協調性がないところが面白い。

忖度なしのメチャ弾きで、共演者をかすませる。

たとえば、ジャコ・パストリアス(ベース奏者)やカルロス・サンタナ(ギター奏者)は被害者だ。

ジャコとは、1979年のライブで結成した「トリオ・オブ・ドゥーム」で共演した(2007年にスタジオ録音音源を加えてCD化された)。

気心知れたトニー・ウィリアムス(ドラム奏者)を加えた3人組なのだけど・・・完全にマクラフリンとトニーのバトル。ジャコ、いたっけ?という感じだ。

マクラフリンは、しみじみとしたベースで聴かせるジャコの持ち曲「コンティニューム」でも、遠慮なく前に出る。

2人に圧倒され、ステージから落ちそうなジャコの姿が目に浮かぶ。

サンタナとは、アルバム「魂の兄弟たち」(1973年)を共同制作した。

「魂の兄弟たち」と言っておきながら、血も涙もない。

ジョン・コルトレーン(サックス奏者)の名曲「至上の愛」のカバーで、出だしの泣きのギターは、マクラフリン。

お株を奪われたサンタナが一歩遅れてギターを泣かせまくるさまが面白い。

 

(以下の記事「トリオ・オブ・ドゥーム」で、「魂の兄弟たち」にも言及)

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人気バンドのウェザーリポートで、先輩格のウェイン・ショーター(サックス奏者)を脇に追いやり、リーダーのジョー・ザビヌル(キーボード奏者)と張り合い、有頂天だったジャコさえもかすませる、マクラフリンとは、一体何者か。

何と、紳士の国・英国の出身。

当初フラメンコギター奏者を志したものの、英国では全くウケないため断念。インド音楽にも傾倒した変わり者だ。

ギター教師をしていた頃の教え子には、ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)がいるらしい。のちには、ジェフ・ベックをフュージョンの世界に引きずり込んだ。

ジャズの帝王マイルス・デイビス(トランペット奏者)に可愛がられ、頭角を現した。

マイルスは、先輩格の演奏家と共演しても、全く物怖じしないマクラフリンの豪胆さを気に入っていたようだ。

 

そんなマクラフリンは、尊敬する相手との共演だと、メチャ弾きせず、引き立て役にも回る。

たとえば、マイルスとか、フラメンコギター奏者パコ・デ・ルシアとの共演がそうだ。

 

マイルスのロックが聴けるアルバム「ジャック・ジョンソン」(1971年)で、マクラフリンは、ロックの味付けを求めたマイルスにきっちりと応えて渋い演奏を見せる。

得意のメチャ弾きは、ここにはない。

 

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パコとの1987年のライブを収めた「パコ&ジョン ライブ・アット・モントルー1987」では、2人がリラックスして共演を楽しむ様子が伝わってくる。

チック・コリア(ピアノ奏者)の名曲「スペイン」のカバーが聴きどころ。

このライブ盤では、2人の速弾きの違いも聴き比べられて興味深い。

パコが滑らかで流れるような速弾きだとすれば、マクラフリンは、しゃくるような弾き方も交えてメリハリがあり、揺らめくような速弾き。

水と炎といった感じだ。

マクラフリンは、フラメンコギター奏者で言うと、マニタス・デ・プラタに似たタイプの速弾きだ(マニタスは、ジプシーキングスのバリアルド兄弟の父)。

 

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マクラフリンは、自らのバンド、マハヴィシュヌ・オーケストラを結成してスタイルを確立した。

1971年のデビューアルバム「内に秘めた炎」では、ギター、バイオリン、キーボードのカオスな速弾きの応酬が聴きどころだ。

1973年のアルバム「火の鳥」では、マクラフリンは不気味な演奏を見せ、ヤン・ハマー(キーボード奏者)の妖しげな演奏と相まって絶妙な味わいを醸し出す。

 

インド風味と狂乱度を増強したバンド、シャクティは、マクラフリンの真骨頂。

インドの太鼓タブラの達人ザキール・フセインを迎え、ギター、バイオリン、タブラのカオスな掛け合いが圧巻。

技巧に走りすぎだとの見方もあるようだけど、マクラフリンが伸び伸びと演奏する姿が目に浮かび、私は大好きだ。

1976年のアルバム「ハンドフル・オブ・ビューティ」がおすすめ。

ジャケットのニヤけ顔が自信のほどを物語る。

収録曲「イシス」では、マクラフリンがフラメンコ風の演奏も見せる。

ただし、シャクティは、一般ウケしにくい音楽なので、ご家族ご友人と一緒の時は、かけないほうがいいかもしれない。

1人で部屋に閉じこもって、ひっそりと聴いてほしい。

 

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1995年のソロアルバム「ザ・プロミス」は異色作だ。

忖度なしのマクラフリンが、豪華ゲストたちを迎え、和やかに楽しむという趣向。

このアルバムでは、マクラフリンは、出しゃばらない。

ベックがギターで歌う収録曲「ジャンゴ」、デビッド・サンボーンがサックスで歌う収録曲「新人類」が聴きどころ。

欲を言えば、ベックとサンボーンの共演が聴きたかった。

この2人は、歌手スティービー・ワンダーのアルバム「トーキング・ブック」(1972年)にも参加しているのだけど、共演はしていない。

歌心のある2人だから、共演したら、きっと名演になると思う。

 

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<おまけリンク>

マニタス・デ・プラタは、ジョン・マクラフリンの速弾きと聴き比べると面白い

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<ジョン・マクラフリンに興味がある方におすすめのアーティスト>

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