ジャコ・パストリアス&ラシッド・アリ「ブラックバード」
Jaco Pastrious & Rashid Ali 「Blackbird」
彗星のように現れてスターとなった後、短期間で燃え尽き、35歳で早世したベース奏者ジャコ・パストリアス。
すさんだ晩年のジャコが異才のドラム奏者ラシッド・アリと出会い、輝いた。
1984年のライブを収録した「ブラックバード」は、そう感じさせる。
ジャコ没後の91年にCD化。
ジャコにはまっていた私は即刻買った。
オープニングを飾る曲「ブロードウェイ・ブルース」が一番好きだ。
イントロからして、わくわく感をそそられる。
♪タンタンタン、タンタタン…と乱打するラシッド。
♪ブーブーブー…と歪んだ音色を響かせるジャコ。
2人の掛け合いが楽しめる。
ラシッドが、♪ズガダ、ズガダ、ズガダ、ダン…とくれば、ジャコが、♪ギャーン…と応じる。
ラシッドの熱演は、映画「セッション」のラストで、「キャラバン」を熱演する主人公のドラム奏者を思い出させる。
意外に短く、あっさりと終わり、もう少し聴きたいなと思うくらい。
まずは、軽快な曲でランニングスタートといったところか。
この曲は、フリージャズの巨人オーネット・コールマン(サックス奏者)の名作。
さまざまなミュージシャンがカバーしたが、ジャコとラシッドの演奏が最高だと思う。
ちなみに原曲はこれ。
ジャコは、パット・メセニーの1976年のアルバム「ブライト・サイズ・ライフ」に参加し、そこでも、この曲をカバーした。
ここでは、ジャコの好演は良いとして、パットが少し物足りない。
ジャコとラシッドの演奏は、いい具合にバトルしている。
次の曲「スラング」は打って変わって、ジャコのベースをじっくりと聴かせる。
ウェザーリポートの1979年のライブ盤「8:30」にも収められていたジャコのベースソロ。
ラシッドは、♪ドロドロ…という感じで静かに絡む。
「8:30」収録の演奏では、ジャコが、敬愛するジミ・ヘンドリックスの名曲「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」のフレーズを奏でるのだけど、「ブラックバード」収録の演奏には、それがない。
これは、わざとか?
だって、3曲目がジミヘンの名曲「パープル・ヘイズ」。
これをジャコがこってりと熱演する。
序盤から、つぶつぶした切れの良い音を響かせる。
♪ブッブッ、ブー…と中盤から、さらに乗ってくる。
そして、♪ジャジャジャジャー、ジャジャージャー…と、おなじみのフレーズ。
ラシッドはマイペースで、♪ダガダ、ダンダン、シャンシャンシャンシャン…とたたく。
このライブ盤から、もう1曲挙げるとしたら、ジャコの名曲「コンティニューム」。
これもジャコのベースをじっくりと聴かせる曲だ。
ラシッドは、♪チャンチャンチャンチャン…とリズムを刻む。
これがうまい具合に、ジャコの奏でるメロディーとかみ合っている。
まあ、「コンティニューム」はいろんな場面で演奏されているけど、どれもいい。
トリオ・オブ・ドゥームを除けば。これは、本当にジャコが悲惨だ。
ジャコ没後、「未発表音源!」とか言って、いろんなライブ盤が出た。
ジャコ人気に便乗した商法で、玉石混交だとは思いつつ、好きだから買ってしまう。
ライブ盤「ブラックバード」は、そんな中でも間違いなく傑作。
同じくドラム奏者のブライアン・メルヴィンがジャコを招いた1986年のアルバム「ナイトフード」はフュージョン色が強く、ポップなので、好みが分かれるだろう。
私は、かっこいいと思うし、好きだ。
ちなみに、私が持っているのは、ジャコ名義で発売された初期のもの(魚ジャケット)。
このアルバムは、またの機会に紹介したい。