
駆け出し記者の頃、展示会の取材で難しいと思っていたのが、書の展示会。
絵画や彫刻と比べて、失礼ながら、どこがいいのか、わからなかった。
私は、大学時代に東洋史の講義を受けて「金文」に興味を持った。
金文は、漢字の発展途上の字で、甲骨文字より発展した段階。
古代中国の青銅器に鋳込んである字だ。
漢字には今も興味があるのに、書の面白さに気づかなかったのは、なぜだろう。
ある時、書家の方に「無理して読もうと思わず、線を追ってリズムをつかみ、絵画的な見方で、白と黒の世界を楽しむといい」と教わって、なるほどと思った。
そう思って、よく見ると、書の展示会の来場者には、作品の前で、なぞるように手を動かして鑑賞している人もいる。
筆のリズムや勢いを味わっているのだなと思った。
そして、難解だと思っていた前衛書が、逆にわかりやすく思えてきた。
実際、絵みたいな作品もある。
円とか、横線一本だけを書いた作品も見たことがある。
字にとらわれずに、筆跡を楽しませる書法なのだろう。
「シャバダバ、シャバダバ」とか、意味のない言葉を歌い、声を楽しませる歌唱法・スキャットが頭に浮かんで、腑に落ちた。
ちなみに、「シャバダバ、シャバダバ」と言えば、往年のお色気番組「11PM」。中学生の頃、ドキドキしながら見たものだ。
篆刻では、篆書体という古い漢字の造形とともに、絵と組み合わせた作品にそそられた。
漢字は象形文字として生まれたので、絵と相性が良いはず。
古代エジプトの象形文字ヒエログリフのように、顔や目を付けても面白そうだ。
酉年の2017年を控えた2016年の年末だったか。
篆刻体験イベントに行った時に「酉」という漢字に鳥の顔の絵を加えた印鑑を作った。
先日、自宅の部屋の片付けをしていたら、この印鑑が出てきた。
それで、書の展示会の取材にまつわる思い出がよみがえったというわけだ。

思いついたら、そのことで頭がいっぱいになるのが、私の性分。
面白い書が見たいなと思って、Amazonやヤフオクで作品集を探していたら、ヤフオクで「夢を尋ねて・・・書業四十年 柴山抱海」を見つけ、落札した。

私の故郷・鳥取市にお住まいの書家で、お寺の住職。
かつて地元の高校で書道を指導しておられ、私も習った。
「あ、柴山先生」と懐かしくなった。
本書「夢を尋ねて・・・書業四十年 柴山抱海」は2001年に発刊。
プロフィールに1941年生まれとあるから、今では、もう80歳を超えておられる。
お元気だろうか。
本書から、いくつか、面白い作品を紹介しておく。
「天馬」は、「天」が人みたいな形で、「馬」は翼があるように見えるので、人が天馬に乗ろうとしているところか。
(この記事の冒頭に掲げた画像)
同じページに載っている2作品の「守」は守っている感じ、「寳(宝)」は大切にしまってある感じが表れている。
この「守」を妻に見せたら「団」と言われた。たしかに・・・

「照」は・・・カタツムリ。字に見えない。
濃淡やにじみを楽しむ作品か。
濃淡の表現で、輝いている感じは出ていると思う。

対の作品「龍虎」は、線が細く、赤や黄色で着色してあり、イラストみたいで面白い。
金文の「龍」「虎」をかなりアレンジしたものだろうか。
太字の作品が多い中、急に細字だと、可愛く感じてしまう。


